『弥勒の月』
あっつい一日。蒸し暑い。しゅうまいの気持ちを体感した。
あさのあつこさんの『弥勒の月』(光文社)を読む。
強い者の心の揺れ、扶護されなければならないように思われる者の持つ しなやかな強さについての 描き方が好き。すばらしい時代小説であった。
同心と岡っ引が事件を追うという定番の設定。 岡っ引 伊佐治は もともと父に仕えていた。 今では、その息子を「旦那」と呼び仕える。 父の使っていた岡っ引なので「親分」と呼ぶ同心 信次郎。 年の差・立場の違いが、言葉の端はしに現れ、言葉にしない気持ちが手にとるようにわかる。 あらわしかたが見事。
はたからは幸せそうに見える者の持つ心の闇。能力のたけた者だから故に とってしまう自信からくる態度。 うまいねぇ。 段落の締めの言葉もいい。
八章を、「闇の月」~「終の月」と月で名付けているところが素敵。
人間の描き方がうまい。言葉がいい。そして遠野屋さんかっこいい。
また、うんまい「時代もの小説」で出会えた。うれしい。
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