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2008年3月17日 (月)

迷子の警察音楽隊

エジプトのアレキサンドリア警察音楽隊が、招かれてやってきたイスラエルで迷子になるという映画。予告編をみて、コレは見るべし!と思っていたのだがいつの間にか終了してました。近場でひっそりと(今週土日だけ、全部で5回上演というひっそりさ!)上演しているのを発見して、昨日 両親とみてきました。
思った程、ドタバタの迷子劇ではなかった。コメディではないの、まったく。 けれど、そこがよかった。困った顔とか、もう一言がいいだせない顔とか、表情が語る映画でした。
音楽隊というから、どんなに大編隊だろうと思っていたら全部で8人。文化交流のためアラブ文化センターでの演奏会のため招聘された、エジプトの「アレキサンドリア警察音楽隊」。空港でいくら待っても、迎えがこない。空港のあの妙に広々した道路だけがあって、車がまったくこない。天気がいいのが、逆に寒々しい気持ちになる。この冒頭、うまいなぁ。警察音楽隊のメンツにかけ大使館を頼らず、自力でバスにのって移動しようとして、迷子になる。実情は、存続が危ぶまれている音楽隊なので、迷惑をかけることを恐れたのだ。一行は、よくわからない寂しい町に着く。 もう帰りのバスはない。言葉も違い、おそらく宗教も違う。アラブ人とユダヤ人。迷子は全くの迷惑でしかないのに、泊めてくれる町の人。 その晩、3軒に分かれた彼らは、その家の人と話もはずまず(片こと)、気まずい空気。 その空気を打破する、決定的な出来事は何もおこらない。 けれど、音楽によって、なんとなく、少しづつ何かが伝わるものがある。 変わらない彼らの退屈な毎日に、昔あった、家族間の暖かいものを思い出させる 何かをうんだのだ。 かみあわない、たどたどしい会話だからこそ、じわーっと伝わるものがある。しみてくる。大笑いする場はないのだけど、クスッとしてしまうシーンがいっぱいあった。こんな地味で いい映画は、 残念だけど、日本では作れまい。
音楽隊隊長トゥフィーク団長の 堅苦しさが逆にかわいらしかった。食堂の女主人は、近所にすんでいたおばちゃまに似ていて、親しみを覚えたし、何よりステキだったのがハリーコニックJr.みたいな音楽隊一番の若造。いかにももてそうな彼の行動は、いちいちツボだった。バスの乗り場を質問しつつ、くどく様はたまらない。「チェット・ベイカーって知ってる?」って言われてみたいわぁ。 あと、イスラエルのデート事情がチャーミング。わたしもあのローラースケート場デートしたい♪ ハリコリr.君(仮名)の粋なサポートがたまらなかった。
団長についていけない若造の怒りとか、生意気な若造に頭にくる団長とか、退役老人のような、老団員の我関せずという様や、間にたって困る副団長。その副壇団長の持つ、あきらめた夢みたいなものが、音楽でうまーくつながる。 大きな出来事によって、固く絆が結ばれるなんてことは一切おこらない。でも、音楽でしっかりつながるものが確かにある。あったかい気持ちにしてくれた。アラブ音楽って、ちょっといいな。
わたくし自身が、なんだか最近迷子気分だったのでより心にしみたかも。普通万歳。

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