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2008年4月 1日 (火)

非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎

エイプリルフール。
動くヴィヴィアンガールズが見れるよ!と おさるに教えてもらい、一緒にチネチッタへ。
これは洋画鑑賞なので、隠れ邦非映非連活動。いやぁ、アート鑑賞かも。そんなドキュメンタリー映画でした。
ヘンリーダーガーのドキュメンタリーを鑑賞してきました。見る前から、見終わった後 爽快感はなさそうと思った。でも見たい。そんな映画。
ヘンリー・ダーガー なのか、ヘンリー・ダジャなのか。彼の名前の正式な発音方法もわからないというところから、はじまる。そこで、もう衝撃がきた。
去年の春、おさると原美術館に「ヘンリーダーガー 少女たちの戦いの物語」という展覧会をみにいって、衝撃をうけた。障害者の施設にいたという経歴から、教育をうける機会があったら、どうであったか考えた。
ところが彼は、小学校にあがる前に、父親から教わり新聞を読むことができたのだそうだ。1年のときに3年に飛び級するほど。記憶のない幼少のころ母をなくし、病弱の父がたおれ、施設におくられる。静かで勉強の好きな少年の歯車が少しづつ狂っていく。彼が狂っているのでなく、まわりが狂っていく。そんな気がした。みていて、落ち着かなく、ぐにゃぐにゃとしちゃった。もうどうしようかと思って。現実との噛み合わなさを、ものすごく理解できる自分がいて、恐ろしくなった。
73歳まで、もくもくと病院の清掃夫として働く。尼僧にしいたげられながら。貧しく孤独な彼は、施設や障害者労働牧場のようなところに送られた経験から、人とかかわらない。怒りは家に持ち帰り、一人で何役もこなし発散する。一人で部屋で、しゃべるところが自分と似ていてまた怖くなる。(私は発散のためじゃないけど。クセ?)
彼は、あつめてきた雑誌のグラビア・イラストに描かれた少女、童話、聖書、を取り入れ、延々とモチーフ化する。一見、愛らしくみえるそのモチーフのゆがみぐあいが、映像になると強烈になる。色合いがいいので余計に強烈で、怖いほどの思いを感じる。彼の生活には、友もなく TVもラジオもない。毎日 掃除夫の辛い仕事をこなす。そして、教会に通う。 家で、誰にも知られることなく、15000ページにも及ぶ 「非現実の王国で」という壮大な小説と挿絵の創作に没頭した。現実を生きていないといえば、それまでだが、現実の苦しさを十分知った人だと思う。ストーリーの展開も重苦しいし、彼をとりまく環境も、重い。それなのに、絵のトーンはこんなにもきれい。そして、絵からくるゆがみががものすごく強烈。ぐったりきた。 大切な女の子の写真(殺害された少女の新聞記事の写真)がなくなった。どんなに探してもでてこない。かれは部屋の棚に祭壇をあつらえ神へ見つけ出してと救いをもとめる。その救済の求め方・・。言葉もでない。紛失したままなので神を恨む。その後、懺悔する。激しい。内に向いた、その恐ろしい程の強い気持ちは衝撃的であった。  
彼の最後の住居の大家であったネイサン・ラーナーが、彼をささえ、作品を保管した。その妻キヨコ・ラーナーの話を聞いているときだけ、唯一落ち着いて映画をみることができた。最後に、その共同住宅の、数人の近所の人がヘンリー・ダーガーの病院にいく。唯一信用したというネイサン・ラーナーが、本をみたよ、beautifulだと伝えると、ヘンリーダーガーは、白目をむいてみせ「手遅れだ」と答えたそうだ。うーん。 わかる。 彼にとって、あれ(作品)を人にみられたなんて。
実は、原美術館ではガーデンピクニックランチをいただき2人でフルボトルの白ワインをあけてからみた。そのぐらいがちょうどいいのかも。ストーリーの最後あたりの、なんとも居心地の悪くなるあの感じを思い出した。 
すごさを、実感。というか体感。 みてよかった。

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コメント

カッパちゃんのこの文章を読みながら(全部読んだよ☆)
また変な汗が出てきました...力作だ。
しかし昨日は案の定、コワイ夢を見てしまった。
ヴィヴィアンガールズっぽい夢だったよー。ひーん
アートに”あたった”のは久しぶりかも。
(この”あたった”は食あたりとかの”あたり”ね)

つうわけでまた原美術館でワイン飲もうぜー

投稿: noppy | 2008年4月 2日 (水) 22時17分

また、あたりにいきますか。
一勝一敗だものね。
次はどうかな?

あんなに、ぐったりくる位のアートとは
なかなか出合えないものね。
一緒に体験できてよかったわ。

投稿: マイチィ☆ | 2008年4月 8日 (火) 23時35分

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