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2008年6月 3日 (火)

『私が語りはじめた彼は』

三浦しをん先生の『わたしが語りはじめた彼は』(新潮文庫)を読む。
最近ときおり出会うのが、いくつかの物語が見事にリンクするとか、結果 ある人物をいろんな角度で見ることになったというような、考えぬかれて絡みあったものが物語となって成立するという手腕の作品。これはよほどうまくないと、ほーっという読後感を得られないように思う。この本も、そんな手腕を楽しめる一冊。
読み進める程に、人の気持ちについて考えてしまう。絡み取られていくがイヤじゃない。人って連鎖して生きているのだなぁ。
大学教授 村上融。村上の周りの人間が主人公になって語る。その話はどれも現実のうまくいかない面がつきまとう。絡みついていくような話。 軸になっているのに、主人公になって語るということのない村上。どちらにもいい顔なんかできっこない。いい人のままでいたいという、調子のよさが、周囲に人間の心に変なゆがみをうむ。そのじりじりした感じが、うまい。
わたしの暮らしなんて何かに影響を及ぼすとは思えない。でもそうではないかもしれない。とにもかくにも、生きていれば誰かにかかわる。悪いこともいいことも含めて、人と関わるってことは悪くない。

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