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2009年1月22日 (木)

『百万の手』

《しゃばけ》シリーズの畠中恵 初の現代小説、文庫化 という帯がついていたので、手にとってみました。 畠中恵『百万の手』(創元推理文庫)を読む。冒頭から住宅の火事のシーン。しかも、親友が焼死というドヨーンと重い幕あけ。
そういえば医療ドラマ。人物がしっかりえがかれているので、そこにばかり目はいかない。病院からきりはなせないのだけれども、そういえばくらい。
登場人物は、過去に傷を負っている。その傷つけるに至る 言葉の、態度の威力にぞっとする。 また、想像に難くない設定なのでゾクっとする。 主人公の少年も、うまく表現しにくい悩みを抱える。そこへ親友の死。 
非常に重いテーマが問題になっている。親が子に対する期待やら、うちの子はこうあるべきという親の頭の中に描いたレールからはずれることやら というような基礎的な問題。 そして、神になったつもりの恍惚感のもたらす恐怖。(人類のために力を得たいというとりつかれた執念。) そういう重く、答えなどでないテーマを、畠中恵さんは、「さすが畠中恵」という表現方法で描く。すごい。 ファンタスティックなんて簡単な言葉で表現してほしくない(帯にあった)。 
しゃばけの若旦那は病弱だからこそ、自分のできることに数少ないことに対して冷静に貪欲にすすむ。できないことをも。できないものの心がわかる分優しく強い心ももつ。 この本の登場人物も、その見た目と異なり、傷つき、虐げられた人間の持つ底力があった。逆境でも、ぜったいにあきらめない。きれいごとでなく、根性であきらめない。なにもかもなくしたひねくれものだからこそ、やっと得たものは何があっても守る。なにくそと守る。彼の言葉に涙がとまらなくなった。
苦労しないで得た喜びなんて、ちいちゃい。喜びと気が付かないことさえありそう。 いいとこどりなんてしても、まったく嬉しくない。 矢面に立たずに名誉だけうけたいなんて調子のいいことは、得ても何の満足感もない。
いろいろと大事なことを、たたきこんでくれる本であった。
とくに神のくだりには、驚愕。私もその勢いにのまれちゃっていたから。 「今」を描いた1冊です。

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