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2011年3月24日 (木)

『てのひらの闇』『名残り火 てのひらの闇Ⅱ』

藤原伊織の名著『てのひらの闇』『名残り火 てのひらの闇Ⅱ』(文春文庫)を読んだ。先月のインフルエンザ治りかけのころのこと。

『てのひらの闇』は、リストラ・吸収合併という企業の混乱の中の話である。サラリーマンになり定年まで勤め上げるというあたりまえと思っていた図式が壊れた時代。今はもう少し進み就職すらなくなってしまった。どこかおかしいと思うけれど、仕方ない、しょうがないと暮らす人もいれば、自分の正義感で生きる人もいる。そんなに人は強くない。そして、正義感を貫いている人をみても無理と思ってしまう。
貫くあまり、自分がボロボロになるヤツがいる。堀江雅之である。ハードボイルドってこういうものなのだな。美学は男のものだけでないのだな。めちゃくちゃだけど、ちゃんと筋が通った人間。そのためにいろいろなものをなくすけれど、信頼と愛情という絆を得る。地位や名誉や金よりも、大事にしなきゃいけないものを、荒々しく教えてくれた。人としてかっこいい。
飲料の大手メーカー、タイケイ食料。宣伝部の課長、堀江雅之。その部下の大原真里。取締役柿島隆志。スナック・ブルーノのナミちゃんと弟のマイク。くせのありすぎる人々に愛情がどんどんわく。ものすごく面白い本だ。
闇。親友のために闇の中から真実を探す。企業の闇。業界の闇。そして個人の抱える闇。闇をあばきより辛い思いをしたりする。あえて自分の心の闇をそのままにしたりする。強い人間でいるために引き受けたものがかっこよく魅力的だった。

『名残り火 てのひらの闇Ⅱ』は、2007年5月17日に逝去された藤原伊織氏の遺作となった。もう、読むことができないと寂しくなる。 夏目漱石のような文豪という位置にいる人の作品なら、こんなおセンチにならずにすむのにな。

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