『しずく』
西加奈子の『しずく』を読む。「もう」っていうのの向こうにある結びつきを描いたという短編集。親でも友でも大好きな人でも、自分の感性と違うところが絶対にある。ちょっと「もう」って思っても、それでも仕方ないなぁと気持ちが寄り添う。長いつきあいだったり、いきおいだったりするようで、それだけでない。西加奈子さんの描くものは、とっちらかり方がいい。人のイヤな面を(ちょっとでも沢山でも)、余計な悪意や色をつけずに、すっと描くことができる。やっぱり相手が必要だと素直に思うことのできる。思いに建前をつけない。かっこつけない。なので心にしみこむ。そこが好き。
表題のしずくは、2匹の猫のはなし。キーっと頭にきて叩きあっても、すぐに何を怒っていたのか忘れて身体をなめあう。しずくって言葉をしらないし、大事なことも怒ったこともすぐに忘れちゃうけど、しずくってものに対してお互いに持っている愛情のような温度だけは、何かの拍子にすぐに思いだす。そんなものだなぁと思う。人は、怒ったことを忘れないから腹が立つのだし、うまくいかなくなったりする。でも、人も猫もいいことを覚えているから、相手が必要になったりする。
何がどうなってしまっても、それでもいい。というか、好き。そういう気持ち。それが書いてある本。
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