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2011年12月11日 (日)

『キリコについて』

西加奈子の『キリコについて』(角川文庫)を読む。
西加奈子は不思議。最初の頃に読んだ『さくら』『きいろいゾウ』で夢中になった。『あおい』の不思議さが面白く、『通天閣』や『しずく』はフムフムと読んだ。 『窓の魚』には、驚いた。これ書いたの同じ人?わけがわからんと読書後すぐ再読。こういうのを奥深いとか冷静とかいうのか。よくわからん。でもついつい最後まで読んでしまう。 西加奈子は不思議な人。
さて、『キリコについて』。これはすごい。大問題の答えのような本だと思った。
主人公は、きりこ。 客観的にいって「ぶす」らしい。 それが何か? と堂々うと生きていく。 自分は自分で決める。 コンプレックス? 悩み? そんなもの自分で自分にひきよせているだけのものなのかも。 自分で考える。 最強のきりこ。
両親の愛情を浴び、素直に信じる。 人間が思う「ぶす」と 猫が思う「すてき」と どっちが正解か。 どっちが?ってことでもう何かにすがっているのかも。きりこは、すごい。
賢い黒猫 ラムセス2世。 猫界では、かわいいは褒め言葉じゃない。「賢い」にグッとくるそうだ。 そうなのかも。 猫の考えも、 引きこもりも、ほめそやしも とにかく、何もかも人に決めてもらった価値は、自分の考えでないってこと。 これが、答えだ! そうよそうなのよ! とつぶやきつつ読む。
執拗に ぶす、ぶすと 繰り返し ぶす が出てくる。  魔法のようだ。呪文にかかりそうになる。 でも、きりこにそんな魔法はかからない。 きりこは自分で考えるから。 かっこいい。きりこ。
大阪弁の具合もいい。 声に出してよみたなる。
堂々とした一冊。

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