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2012年1月30日 (月)

ストリート・ライフ ~ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち~

先週、恵比寿の東京都写真美術館にいってきました。
「ストリート・ライフ ~ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち~」 この展示のポスターになっているのが、アウグスト・ザンダー『若い農夫たち』1914年。スーツをきた青年3人。農夫だったのか。あらゆる階級・職業のドイツ人を記録することにより、社会構造を見ようとする壮大なプロジェクトを手がけたそうです。その壮大さはわからなかったけれど、誇らしげにレンズに向かういろんな職業の人に時代を感じた。1929年に『時代の顔』として刊行したそうだ。ナチスに押収されるが、幸運にも消失を免れたネガからのプリントというところにも時代を感じた。
同じドイツ生まれのハインリッヒ・ツィレ。ワイマール政権下の市民生活を風刺したリトグラフなどが高く評価された人だそうだ。 彼の作品は、とにかく女が木の枝を運ぶ。意味をもたせた何かいいたげな作品とは異なり、事実をドーンと写す。 『荷車一杯の木を運ぶ2人の女、シャルロッテンブルクを背景に』1898年というように とにかく木を運ぶ。 足首までの長いスカートを穿いた女達が、自らの生活のために木の枝を集めまくる。そしていつ壊れてもおかしくないような荷車に、考えられない程詰め込み、ひたすら押して帰路につく。社会の弱者であるのかもしれないが、悲惨という視点でなく撮っている気がした。女は強い。きっと男も。人は強い。負けないという優しさがあるような気がした。とにかく、どれもこれも木の枝を運んでいる写真の繰り返しに興味をひかれた。
もう一人の同じドイツ生まれは、 ビル・ブラント。マン・レイ の助手をつとめたいうシュルレアリスムの影響があるそうです。芸術感が強いのかな。映画のワンシーンのようにかっこいい。でもよくみると普通の人達。『若い主婦、ベスナル・グリーン』1934年というように。 イギリス人の社会生活の記録。『イングリッシュ・アット・ホーム』は、普通の暮らしを撮っている。なのにきりとったシーンのようにみえる。プロってすごい。
イギリス生まれのジョン・トムソンの撮るロンドン市民の暮らし。『ストリート・ライフ・イン・ロンドン』としてまとめられたものは、社会へのメッセージ性があるような『ロンドンの流浪者』1877-78 というタイトルのものがならぶ。タイトルは重くても深刻さを前面におさず 淡々としていた。
同じく イギリス生まれのトーマス・アナン。グラスゴーの街の様子を写す。再開発計画の一環として壊される前の建築物や街頭の風景の記録を、市から委託されたものだそうだ。壁ははがれおち 街並みに人のいないものも多い。貧しい居住者がいるものもある。 『袋小路 118番、ハイ・ストリート』1868年 というようなシンプルな作品名でつづられる。再開発にあたり、市が現状の写真を残しておこうと考えるのはなぜだろう。 現実をきちんと写しだした写真達は、かつて人々が賑わい 栄えたことのある空気がちゃんと残っていた。
写真作品に関する知識が少なくても知っていたのが、ブラッサイ。ハンガリー生まれだそうです。1932年に発表された写真集 『夜のパリ』。単純な感想だが、ポストカードはあくまでもポストカードだと思った。 こうやって展示されていると ただのお洒落なシーンではない。 パリの生活の光と闇。 この時代のパリはどうだったのだろう。 想像しながらじっくりみる。 前述のビル・ブラントは、このシリーズに触発され「ナイト・イン・ロンドン」を制作したそうだ。その解説を読み、またもどって見直してみたりした。
同じパリの街並みや人々の暮らしの作品は、ウジェーヌ・アジェのもの。フランス生まれ。建築物の内部の装飾の詳細部分などを撮影し、画家たちのための資料として販売したそうだ。なるほど。とにかく手すりばっかりとか、とにかく連続して残すことで何か効果が出てくるような気がする。これら生計のために記録した約8000枚もの写真は、晩年、マン・レイに認められ、ベレニス・アボットによって世に広められたそうです。 なるほど。
会場とぐるっと周ってみて、「ストリート・ライフ」という言葉の効果を感じた。 個性を強烈に押し出し 俺の作品! とアピールするものと異なり、 地道な積み重ねの先に ジワジワとしみてくる各人の個性が面白かった。  取り出してみると、お洒落な写真だなと思うだけかもしれない。 それを 固めてみると奥深さが面白かった。押しつけ感がないのに面白い。
ヨーロッパの都市が近代化のため急速な変化を遂げる。そこで消えていった街角や生活の様子は素敵でもったいない気がした。反面、ちゃんと今でも残っているものも多く、日本のバカみたいに高いビルばっかりの風景より ずっと素敵だとも思った。住みやすい暮らしも必要。風景を守ることも必要。今のビルが100年後に残っていたしても、その美しさを愛でる気持ちになるのであろうかと考えた。

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