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2012年2月17日 (金)

空の中

有川浩 『空の中』(角川文庫)を読む。自衛隊三部作というのをまで読んでいなかった。3冊の順番が心配だ。「空」からだといいけど。塩の街からなのか。 よーく気をつけるのだけど、それは気をつけたつもりだけだった・・ってことは日常茶飯事だ。
日本初の超音速旅客ジェット機「スワローテイル」が試験飛行中に突如爆発炎上する。超音速旅客ジェット機って日本製のものはないの?!
どうも、未知のものが存在しているらしい。そういう時には それが人類にとって、地球に取って害があるのかないのかが一番の問題として取りざたされる。そういうものなのかなぁ。 次に、世界的にみてその解決に導くことで世界を動かす主導権争いの匂いがしてくる。 強い弱いの順を決めておきたがる怖さを感じた。秩序を保つには大事なことかもしれないが、その争いは果てしない。わけのわからないものは次々に出てくる。なくなることはないだろうから。事件から1歩ひいて全体を眺めている読者だからいえること。中にまきこまれたら、指導者を求めるだけかもしれない。
人類的に壮大な話。でもそこにはそれぞれの誰かの日常が結びついている。 事故でなんだかわからないものに父を殺されてしまう斉木瞬と、白川真帆。接点のない2人が引き寄せられる。周りにしっかりと人間らしい人がいる瞬と、1人大人のように闘うすべと強さをもってしまった真帆。
家に帰ったら待っている人がいて、話をしたいと思ったら話す人がいることが当たり前の人間にはわからない。全て揃っている幸せを悪いことのように感じてしまう佳江。仕方ないと思わないところがまっすぐでまぶしい。 自分の身に起こってみないと、わからないことって沢山ある。自分がなってはじめてわかる。なっていない幸せな時に、自分が心ならずもはいてしまった暴言に気付く。 宮じいは、してしまったことは取り返しがつかないという。謝るしかない。許されてなくても、してしまったことをよく肝に命じ 気をつけるしかない。何度間違えてしまっても。 普通っていい。得をすることよりも普通っていい。
白川真帆の、何かと闘わなくては母に認めてもらえないと思い込む図式がすごい。 亡父の仇を討つという目標を、どうしてこの娘はみつけてしまったのだろう。これが最後の別れになる可能性があるのだから、出かけの喧嘩はいけない。この簡単な図式はひどく難しい。 鼻もちならないけど、否定したくない。この感じが興味深かった。みんな、自分の宮じいが欲しいのだと思う。ちゃんとみていてくれる人の一言は心にドーンとくる。 いつかは宮じいの方にならなくてはいけない。
設定は突飛。 でも、問題は突飛ではない。魅力的な人物達により引き込まれた。  航空自衛隊 光稀の努力の証のような気の強さ。ピンチのときに、ゆっくりと会話のできるすこぶるかっこいい人間性の高巳。この2人の関係のような読者のくすぐりもうまい。くすぐられた

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