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2012年5月 2日 (水)

『東州しゃらくさし』

松井今朝子の『東州しゃらくさし』(幻冬舎時代小説文庫)を読む。文庫待ちになるのを楽しみにしていた一冊。
歌舞伎が好きなのはもちろん、写楽展でたっぷりと写楽の浮世絵を見た後に読むと 更に面白い。 写楽とは誰か。書き手にとっては腕のなる主題であろう。さすが、松井今朝子。面白いだろうと思っていたが、それ以上に面白かった。写楽という男を追うくだりを面白く読む。平行してかかれている上方の歌舞伎と江戸の歌舞伎の差を味わううために、読んですぐ読みなおし。今度は歌舞伎興行のちがいのくだりを面白く読む。さすが、松井今朝子。100ある情報の20位しか出していなのであろうなぁ。知っているあれもこれもださず、整理されていて、こみいった世界がよく伝わる。看板役者に脇の役者。裏方。茶屋も、舞台を廻す人足も、こっそり入る輩を取り締まる人も、みんな芝居小屋にかかわる人だ。ものすごい人数が動く様、意地の張り合い。そんないろんな思いが渦巻く世界が、滅法面白かった。
上方を代表する歌舞伎の作者・並木五兵衛。五兵衛の目に止まった彦三。しゃらくさいわいと鋭い目をする道具方の絵描き職人。大坂から江戸に下る五兵衛の力となるよう江戸に行ったはずが、ただならぬ才能を見抜いた版元・蔦屋重三郎により人生が変わる。蔦重の政府に痛めつけられて弱った様や、持っている財力でいかに絵師を育てたかも面白く、蔦重の人柄の大きさを感じた。自信や羨望や絶望、絵師ばかりでなく周りの人間の生きざまも活き活きとし、どの人物の心持ちもよくわかる。
絵の才能を持つ男の苦悩。あえてアドバイスをしない形で彼を育てようとする人、やっかむ者、邪魔をしようとする者、惚れこんで守ろうとするもの。時代の変化にももまれ、とにかく苦悩する。才能は苦悩あって、初めて開花するのだな。しみじみと思った。
写楽は誰か。この大きな謎を描く作品は数多くあるだろうが、この松井今朝子案は江戸の匂いがプンプンしてくる滅法面白い話であった。

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