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2012年8月 1日 (水)

『空色メモリ』

今日は、横浜の花火大会。いつにもまして豪勢で華やかでした。たまや~かぎや~っていう風情というよりも、ラスベガスのよう。でも、あの重ねる配置のセンスは日本人の技です。きれいでした。東京のも横浜のもみんな違ってみんないい?!

越谷オサムの『空色メモリ』(創元推理文庫)を読む。越谷オサムは、本屋さんでよく平積みになっている『陽だまりの彼女』がずっと気になっていました。丸善で「サイン本」と書かれていたのでついこちらを手にとりました。いい本でした。
ブーちゃんと呼ばれることに抵抗があるけどイヤといえないぽっちゃりとした陸が主人公。非モテ男子の高校生活って書いてあったけど、モテル男子なんてほんのひとにぎりで、残りは男子だと思う。非モテ男子じゃないな。
たったひとりで県立坂越高校文芸部を守る、ハカセ。もうここで立派だと思う。陸は、文芸部に入りびたるが、決して部員になろうとしない。面倒なことから距離を置く。当たり障りなく暮らすことに努力する。高校生のころっていろいろ大変だったなぁと思い出す。陸は、ハカセという友がいる。デブとメガネのモテない男子に春が来るはずないというが、共に春のこない仲間がいる。それなのに、一人で守っている文芸部に入部しない。部員として責任をとることから逃げる。本がきらいじゃないのに、自由に書く方を選ぶなんて意気がっている。それでも部室にいって日常を記録している。「空色メモリ」と名前をつけて。自分は狭い世界で生きていくことが似合っている。これでいいなんて思ってる。そういう気持ちが手にとるようにわかるし、今の自分も同じだなと思う。自分で自分を納得させている。
そんな毎日に、変化が起こる。勧誘もしていない部に入部希望のしかも女子がやってくる。たった一人で。そこからデブとメガネの日常が変わっていく。自分から人にかかわっていく。うまくいかなくも、あきらめない。さすが、たったひとりで文芸部を守る部長だ、ハカセ。そしてハカセのためにがんばる陸。友達なんだなぁ。「友のために何かしている私」に酔うような女子と比べ、男子にはそういうのがなくていい。 
女子は女子で大変。あたりさわりなく生きていればいいわけじゃない。あっちもこっちもいい顔しなくちゃならない。そんな毎日を送りながらも、心に疑問を持つ女子サキが登場する。この子もいい。着陸の方法を教わる前に離陸しちゃうというその感じもいい。秘密もいいタイミングで間違いない人に言っちゃう。
この生きにくそうな子達が、うまくいかないながら必死で策を練る。大事なことを言う意気地がないくせに、あきらめず態度でそれを伝えたりする。不器用な彼らの一生けん命な毎日がいとおしくかわいかった。
調子よくいいところどりをする可愛い子が、実はそんなに楽しくなさそうに描けている感じもよかった。
新谷くんはダルビッシュを思い浮かべながら読んだ。高校生じゃないけど。
とても気に入りました。

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