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2012年8月 2日 (木)

『ボーナス・トラック』

『空色メモリ』が気に入っちゃったので、続けて越谷オサムを読む。『ボーナス・トラック』(創元推理文庫)。デビュー作らしい。展開がよく、ひきこまれた。
主人公は、草野哲也。社会人になってそう間のない青年。毎日長時間働いて帰っての寝てまた働いての連続。余裕もない。社会人になってみて、学生のころは時間があったなぁと振り返る。ごく普通。輝くような日々をすごしているわけではない。車で通勤中に独り言を言ったり、手荒な車の運転に悪態をついたりしているごく普通な毎日。そんな中、ひき逃げ直後の現場に出食わしてしまう。逃げずに助けようとする。ここが、普通の人より立派。正しい事をしているのに、警察を待っている間の恐怖とか、警察から第一発見者として疑われる理不尽さとか、そういう表記がうまい。主人公の気持ちにすっとなり、一緒に焦ったり怖くなったりする。
そこに轢かれてしまった被害者が登場する。横井亮太。この人もごく普通の人。轢かれて死ぬということは、あまりにも突然で、轢かれた・死んだという現実を こういう風に受け入れられないだろうなぁと思う。亮太視線での会話も、思うこともすごくよくわかり、一緒になってうーむうーむと読む。草野さんの視線の会話と、亮太さんの視線の会話が ごく普通に交差し展開する。自然でいい。
南兄の真摯な感じもいい。ぶっきらぼうで表現が下手だけど、ちゃんと自分で考えて人のせいにしない。不器用なぐらいの方がいいなぁ。
まじめにこつこつ生きている。飛びぬけた幸運は起こらなくても、地道な毎日に何かいいことがある。ピンチもあるけど。人の悪い面を知ってしまうけど、案外いい奴だと思ったりもする。普通にあることが結構いいじゃんと思える。人のことはよく見える。自分のことはわかっているようで、自然とやっかいなことを避けたり、仕方のないことだと思おうとしている。真実を突かれることを恐れていたりする。人と暮らすことはやっかいだなぁと思っても、人とかかわることを心地いい。そういうことが説教臭くなく、じわーっとしみてくる。お仕事もがんばろうかなって思う。
タイトルの意味が、なるほどしみるところもいい。

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