市川流リサイタル
覚書
国立能楽堂にて開催の『市川流リサイタル』にいってきました。成田屋贔屓大集合。脇正面の最も後ろの席でした。能楽堂なので遠くないですが。でも、正面からみたかったなぁ。橋がかりのところとか、出からしっかりみることできました。後見の働きぶりとか、義大夫を真正面からみることもできました。脇正面なりのみどころはありました。でも、正面からみたかったなぁ。
まずは、『松廼寿翁三番叟』。ぼたんさんが面箱を持って登場。千歳。清潔な感じがしました。 團さまと紅梅さんによる翁・媼。翁媼が退場し、三番叟の海老蔵さん。あたりまえですが、これは能楽でない。三番叟となるとどうしても能楽と比べてしまいます。そのうえ、能楽堂でみていますし。踊りでの演目とわかっていますが。登場したときに拍手が起こるとか、いろいろあれ?と思ってしまいました。どうしても、神聖なものの部分を求めてしまいます。わかっているけど。華やかで、4人の役割がきちんとある演目でした。おごそかというより、華やかでした。ぼたんさん以外は、素踊りの形式というのも、珍しくてよかった。能楽堂にあわせたいい演出だと思いました。 河東節の演奏があり、驚きました。翁三番叟にあっているのであろうか。
休憩をはさみ『黒谷』。熊谷陣屋の熊谷次郎直実その後です。お主のために、我が子の首をお身代わりにと差し出す。自分は仏門の路に入り、余生は菩提を弔って生きようとする。ここまでは、歌舞伎でよくみます。そのつもりでいても、夜ごと後悔の念にさいなまれる熊谷(團さま)の元に、敦盛・玉織姫・小次郎の霊が現れる。この3役をぼたんさんが踊る。敦盛がとてもよかった。17才の青年の苦悩。自分の変わりに命を落としてくれるものがいる。そういうものを背負った若者が、よく似合っていた。女子の華奢さや声も少年に近い青年のそれであるようで、よかった。 黒谷は、團さまが闘病中に書かれたそうです。三升屋白治作。白血病が治るようにというのと、先代の治雄をかけた筆名だそうです。すてき。とてもいい話で、人間くさく胸にしみた。またみたい。
最後に海老蔵さんの『鷺娘』。はじめて、ぼたんさんが振付をし、海老蔵さんも初役だったそうです。大きな鷺でしたが、鷺の中には大きなものいると思う。
能楽堂をいかした公演という工夫を感じました。少々照明がくらかった。おごそかな感じになっていましたが、後ろからみると少し光量が足りない。顔や表情をみるためだけではないので、かえって雰囲気を味わえたかもしれませんが。
最後に、舞台に團十郎さん、紅梅さん、海老蔵さん、ぼたんさんがもどってきました。海老蔵さんは鷺娘のまま。團十郎さんから、市川流の舞踊を守っていきたいというお話がありました。海老蔵さんにも挨拶をするようすすめ、本興業ではやらないようなお役をつとめました、お見苦しい点もあったかと思いますが、ぼたんの初の振付で臨んだというような殊勝なコメント。團さまも海老蔵さんも感謝のようす。それを、なんだかなごやかに話す。さっきまでどうどうとしていたのに、ほんわかしました。だから、成田屋を贔屓しちゃうんだなぁと思いましたことよ。最後に團さまが1本締を提案。会場中、いよぉー「ポン」としめたのに、團さまだけ、「ポポポン」と続けていました。これよ、これ。いいなぁ。ちょっと(かなり)お高かったのだけど、行ってよかった。能楽堂という特別な空間での公演を楽しみました。
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コメント
こんばんは!
私は昼の部正面のほぼ真ん中で見ましたので、初めて観る海老蔵さんが4人の中で一番お顔が小さくて、お父さんより首一つくらい背が高いのにびっくりしました。
海老蔵さんはパーツが大きいので、誤解されるのでしょうね。ぼたんさんは團十郎さんそっくり。小柄できびきび踊っていらっしゃいました。続く鷺娘の海老蔵さん、本当に華奢で可憐な少女みたいな女方、夢二の絵のようで美しくて夢にまで出て来ました。
役者さんって凄いですね。
投稿: 絵梨香 | 2012年9月 5日 (水) 23時12分
絵梨香さま
はじめしまして。コメントありがとうございます。
正面からごらんになったのですね、いいですね。
そして、夢にでてきたのもいいなぁ。
ぼたんさんの少女のような少年のような黒谷、きれいでした。
歌舞伎役者は、顔が大きいと錯覚する位の方が、舞台映えしていいですね。
投稿: マイチィ☆ | 2012年9月 6日 (木) 22時30分