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2012年11月20日 (火)

吉例顔見世大歌舞伎 昼の部

先週末、演舞場に行ってきました。あいかわらず、11時開演・4時開演と上演時間が短いまま。お値段はそのままで。2013年1月新春公演も、11時開演・4時開演のままでした。1等お値段は上乗せ。どうしても、納得できません。お客は放っておいても来るだろうとたかをくくっていやしませんか。よろしくお願いしますよ松竹さん。歌舞伎を愛するものとして、この一方的な感じは心配です。文句はここまで。
昼の部をみてきました。仁左衛門さん休演が心配です。
双蝶々曲輪日記。井筒屋、難波裏、引窓。井筒屋からの上演は、東京では戦後初だそうです。ここからみて、引窓がより身にしみました。同じ人殺しでも運のいいのと悪いのと・・・という台詞の重みもよくわかりました。侍には、お抱えの関取がいて、関取はその侍の対面を守るために忠を尽くさねばならない時代の背景もよくわかりました。左團次さんのどっしりとし、貫禄のある関取 濡髪長五郎の大きさ、翫雀さんの若くて元気な素人相撲の放駒長吉との差もいい。長五郎が力を貸す与五郎は、扇雀さん。遊女の身請けを巡り喧嘩したりとナヨナヨっぷりがいわゆる色男風でした。遊女の時蔵・梅枝コンビは、立場が弱さと ちゃっかりと客を手玉に取るしたたかさの感じが見事。難波裏で、長五郎は本当にふとした事で人を殺めることになるのだとわかる。侍が死んだからには忠義を尽くす必用もなくなった、後のことはまかせろと男気を魅せる放駒長吉。短い場だが、なかなかいいです。このお話は、濡髪長五郎が主役ではないかしら。左團次さんが、すごくよかった。
そして、この流れで引窓。よくかかる演目なのでこれからどうなるのかよくわかっている。冒頭の明るい場面が、これからの悲しさとの差を思わせていい。竹三郎さんの母親役は、あったかくて情が深くとてもいい。泣かされました。時蔵さんのお早の必死さもよかった。仁左衛門さんが休演なのは残念でしたが、梅玉さんの十次兵衛もよかった。さっぱりと明るい気性が可愛らしい。刻限を過ぎれば、兵衛後だという台詞が温かかった。いい配役でした。
最後の演目は、文七元結。何度も繰り返し上演されている芝居。かつ菊五郎さんの長兵衛さんも何度もみました。この確実な座組にて安定した間合いでの芝居というものは、間違いなくいいものなのだなぁと思った。台詞のないところの空気もいい。
菊五郎さんの長兵衛さんに、ポンポンと物をいう時蔵さんの女房お兼。いいんですよぉ、私さえと一途に思いこむ菊之助さんの手代文七。言うべきことはしっかり言う魁春さんの角海老女将お駒。みんないい空気を醸し出す。團蔵さんの藤助さんは、角海老で働く人間の軽さがあるし、東蔵さんは大きなお店の主人の貫禄がある。松緑さんの鳶頭は、キリっとし、丁稚の大河くんはかわいい。完ぺきに歌舞伎の世話物の世界ができている。安定しても退屈しないというのもすごいなぁ。また文七元結かと、ちょっと思ったのだけれども、やっぱり面白かった。
娘お久ちゃんは、大注目の尾上右近さん。天才なのだもん。指先にまで完ぺきに気持ちをこめ、誰よりも計算しつくした見事な動き。うますぎておかしくなってくるほど。眼が離せません。一挙手一投足にひきよせられました。うまいなぁ。

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