浅草歌舞伎千穐楽・昼
1月最後の日に、すべりこみで感想を。
「お年玉ご挨拶」は、孝太郎さんでした。ベテランのゆとり。上手に集中させますなぁ。拍手のお稽古は誰よりもうまくもっていっていました。ライブだ、YAZAWAと言うとは。昼の部の拍手は、とても多かったように思う。幕があいたら大きな拍手、登場したらまた拍手。対面の並び大名や、極付幡随長兵衛の舞台番にも大きな拍手。がぜんやる気がでるだろうなぁ。やわらかいトークでも最後に正座をし、隅から隅までずずずぃーっと と口上を述べるとばっちり歌舞伎になる。歌舞伎役者ってすごい。
「寿曽我対面」
初日にみて、五郎の松也くんの力みすぎを多いに心配した。力入れすぎで反りくりかえちゃっていたから。ひきかえ十郎の壱太郎くんは、たっぷりたっぷり藤十郎さんのようにたっぷりとしっかりと台詞を言う。所作もきれい。でも若さがちょっとアンバランス。これは年月が解決することだけど。若いのに落ち着いてたっぷりすぎ、かつ子供っぽい。不思議に目の離させない人です。いつも注目。五郎十郎は、いいコンビではなかった。呼吸とか。松也くんは800%ぐらいの力で、叫んですらいました。梶原・子の新十郎さんが、朗々とした声でたからかな台詞を言うのがきれいだったのでひっぱれたのであろうかとか、いろいろ考えてしまいました。松也くん、他の演目はとてもよかったのに。いつかきっと荒事もうまいこと緩急がつくようになって欲しい。ちょっと驚きの対面でした。
大磯の虎の米吉くんはやはり色っぽい。でも、米吉くんも梅丸くんも傾城の衣装に埋もれてしまっていました。あれを着こなすのって大変な事だったのですね。工藤の海老蔵ちゃんは、どっしりとして、子供歌舞伎になりそうな場を納めていました。鬼王の亀鶴さんと。 特筆すべきは、舞鶴の新悟くん。うまくなったなぁ。こんなに上手かったかしらと思うほどの成長ぶり。キリっとしている上に柔らかみもあり品のあるいい舞鶴でした。
昼の最後は、「極付幡随長兵衛」。実は、これはそんなに期待していなかった。大の海老蔵贔屓なのに。だって、長兵衛には若すぎるもん。時節を待ってもっといい長兵衛をって思った。それにどうせ水野のやろうに殺されちゃっていつも後味の悪い思いをする演目だったので。 ところがどっこい。初日にみてハートを居抜かれましたよ。かかかかっこいい。昼の部は、初日と千穐楽しかみないので(充分なのか・・・)、もっと切符を取ってもよかったのではと考えちゃうほど、よかった。最後、湯殿で殺される際に、思わず水野が「殺すも惜しい」と言うがそのセリフがすごく効いていた。本当に惜しいような格好のよい長兵衛だった。仁義があって、頼もしくて、粋でいることを貫いた。男の美学ってやつも認めさせるいい長兵衛でした。
劇中劇「公平法問諍」。この問答がこんなにすーっと楽しめたのも初めてかも。なんて勝手な理論なんでしょう。公平が上人をなぐる理屈が小学生のそれっぽくて可笑しかった。すっかり公平=市蔵さんが定着。あれ、芝居を止める人が出てこなかったらどこまで演じることができるのかなぁなどと考えた。舞台番は、新十郎さん。ほれぼれする舞台番でした。なだめていたところから、急に脅すところがすこぶるいい。頼りになる舞台番でした。そんな舞台番までも侍に椅子にされると、まってました!長兵衛登場。ここが一番いい。初日に、花外でみていたのでものすごく近くにやってきてクラっとしました。みなさまがお困りだと、横柄な武士に丁寧に言ってきかす。丁寧なのだけど、元侍の海老蔵・長兵衛の大物感はすごい。「芝居を見に来ているうちはこの首はやられねえ」と首をひとつポーンとたたいてみせる時の迫力。これは、生でみないとはじまりません。映像でも写真でも、この底力は伝わらない。でもどんなに遠い席からでも生でみていれば感じる底力がありました。 かけつける子分たち、ここはとってもいい場面。でも、子供っぽい・・あんまり頼りにならなさそう。かわいいのだもん。おかみさんは孝太郎さんなので、夫婦でなんとか場を落ち着かせました。いきがる子分ども(壱太郎くん種之助くん米吉くん隼人くん)かわいくて微笑ましくなっちゃった。国矢さん・松次郎改め松十郎さん・功一さんくらい渋くなる日を楽しみにします。出尻の松也くんはおかしみがあって好演。この余裕がさっきの五郎にもあれば。唐犬は亀鶴さん。変わりにいきやしょうと言うのを、長兵衛がそういう訳にはいかないんだとやりとりするところの呼吸がよかった。覚悟して着替えを手伝う孝太郎さんの場もよかったなぁ。なんで水野の野郎なんかの呼び出しに答えなきゃならないか、それが男の生きる道だから。それがすーっとわかるのは珍しい(初めて)。まさに極めつけでした。いつもは、やっかいなもんだなぁと思う「男の美学」ってやつが、ステキにみえました。水野の策略を見抜きつつも、男の道を貫く。そんな海老蔵・長兵衛の男っぷりを、「殺すも惜しい」とついつぶやいてしまった水野。愛之助演じる水野のその一言で水野のこともちょっと見直した。そして、いつもはそんな一言が、耳に入ってこなかったなぁと思った。ちょうどその年齢くらいで演じるというのも、いいものなのかもしれないなぁと思った。
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