『通天閣』
織田作之助賞受賞作。西加奈子『通天閣』(ちくま文庫)を再読。
ニューヨークに行ってしまった恋人と別れたんじゃないと自分にいいきかせながら生きている若い女子。
町工場でとにかく今日の糧をかせぐために働く中年男。
自分により厳しい試練を与えるために、スナックで働く女。苦労すればするほど、これがあの人への愛情と思い込もうとする。それが間違っていると頭の片隅でわかっていても。
幸せになることを恐れるように、人とかかわらないようにする男。人を拒絶しているのに、自分から相手に手を差し伸べる。自分でそんな自分にうんざりしながらも。
待っていてもいいことなんか起こりはしない。でも追い込まれていく中で起こった事件で自分が動いてみると、そこささやかな何かが生まれる。とびっきりいいことでなくて、そのささやかさがなんかいい。
去年、通天閣の近くに行ってみてその辺りの独特さに驚いきました。こういう世界もあるかもしれない。
歌舞伎座新開場 あと42日
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