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2013年8月 9日 (金)

『影法師』

百田尚樹『影法師』(講談社)を読む。うーむ、いい本でした。そして、『夢を売る男』と同じ作家とは・・・と驚く。
友情とか。自分を犠牲にとか、そういうわかったような言葉では、表すことができない。自分を犠牲にしているのではなく、何か言葉でおきかえるならもう「愛」しかない。相手に気がつかれるかどうかは全く関係ない。相手が「大干拓」という夢をかなえることを信じ、道をつくる。その壮大さに圧倒された。1人の一生は、その当人1人でなくかかわる周りの人々を含め、どんどん大きなものになっていく。
江戸時代、北陸の小さな茅島藩。武士という身分。徳川家でなくとも、身分や上下の位がはっきりわかれていて、それを越えることなどありえない。どの階級にもそれぞれにまた上下が決まってしまう。それぞれが藩を思い、家族を思う。まず主のためにが大前提であるが、自分の為にも生きている。どうにもならない。そういう世の中だからとあきらめない。納得しない。そんな男達は、まっすぐで、強くて、惹かれる。鍛錬と精進。その姿には、頭があがらない程まじめである。国のために自分ができることをまじめに考え、武士だから民のことを思う。それでも、大人のしがらみにまきこまれる。負けない少年達、青年達の成長にぐんぐんと引き込まれる。
そのなかで飛びぬけて光る少年がいる。頭脳明晰で剣の達人。明るくさわやかで誰もが一目置く。その「光」のようにみえる男 彦四郎 が不遇の死をむかえる。何があったのか。
冒頭で、国家老・名倉障蔵が竹馬の友・彦四郎の不遇の死を知る。自分の生い立ちを振りかえり、彦四郎の存在の大きさを知る。下級武士の家にうまれ、その地位や貧しさをはじることなく、まじめにまっとうに努力していく男。勘一は、すざましい努力の上幸せになる。が友の死後、その友の思いを知る。その残酷さも、またいいのかもしれない。そんなに人を思えるのか。強い心に驚愕した。親友ということばを軽々しく使うことができなるほど、何かいろいろ考えてしまう小説でした。

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