« Kawaii 日本美術 | トップページ | 『名もない毒』 »

2014年2月24日 (月)

『理由』

宮部みゆき『理由』(文春文庫)を再読。本棚にあったのだから、既読のはずなのに新鮮に読む。
大財閥・今多コンツェルンの広報室の杉村三郎が主人公。会長の娘と結婚し、いわゆる玉の輿扱いされる。妻を思い、娘を思う。家庭には愛が満ちている。人からなんと言われようと、失うことなど考えられない大切な家族である。でもそこには人の興味本位の目があり、取り入ろうとするものや、やっかむものの心ない言葉に潜む小さな悪意が忍び寄る。
会長の個人運転手である梶田信夫が事故死する。残された娘たちの相談を受けるという会長命令が下る。会長に言われたからだけでなく、手を貸したいという自らの意志もわき、少しづつではあるが事件を明らかにすることに力を尽くす。人が死んでいるのですが、やや地味で、そう盛り上がる訳でもない。その特別でない描写が肝だと思った。人の心にある「悪意」と、人の行動から 「悪意」という程でもないが小さなトゲのように突き刺ささってくるもの。その描き方がうまい。後味の悪いほど。事故をおこして人を殺してしまった人よりも、人を家族を嫉む気持の方に恐ろしさを感じさせるから。根底にある悪意が少しずつ明らかになるのが恐ろしかった。

|

« Kawaii 日本美術 | トップページ | 『名もない毒』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/81962/55138188

この記事へのトラックバック一覧です: 『理由』:

« Kawaii 日本美術 | トップページ | 『名もない毒』 »