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2014年2月10日 (月)

鑑定士と顔のない依頼人

保険人保険のきかない歯をいれました。大事にしなくちゃ。

気になっていた映画、「鑑定士と顔のない依頼人」をみてきました。美術品鑑定士の物語かと思っていたら、姿を現さない女からの依頼というミステリーでした。師玉の。
オークションの一流鑑定士であるオールドマン。彼の言葉は大きな力を持ち、彼がかかわるオークションこそが一流品を扱うオークションになる。天涯孤独で友もいない、短気で気性の激しい彼。彼は、ひそかな楽しみを持つが故、人と関係は何もいらないのかと納得させられるのが、自宅の隠し部屋。その部屋の壁一面に、すばらしいものしかない女性の肖像画が飾られている。この部屋をみるだけでもこお映画をみてよかったと思う。固執狂の残酷な感じが面白い。オークションのパートナーであるビリーにも、この部屋のことはおろか一緒に鑑賞する気さえない。ビリーをオークション常連客にさせ合図を出し落札させる。ビリーは、自分のコレクションを増やすための手段であって友ではない。ビリーが自分の絵を一度でもいいからちゃんとみて欲しいとオールドマンに切々という様子が後々の伏線となってくる。
怪しいところはあちこちにある。屋敷の美術品鑑定を依頼するが決して姿をあらわさない女。オークショニアのオールドマンのプライドが許せなくなるギリギリのところで、一流の目利きにしか気がつかないものをすべりこませる。受けるはずのない、姿をみせない女、顔のない依頼人の仕事なのにどうしても手放せなくなる危険なモノ。15歳から外へ出ていないと告白する女、クレアへのめりこんでいく様はいかにも危ない。屋敷の前のカフェにいた小さい女の人は、いかにも何者かであると思わせる。わかっていながらもどんどん歯車が周り、用心深く美術品しか愛せない男を狂わせていく。ガラクタにしかみえない歯車。そんな部品が、歴史的発見ともいえる美術品と見抜く目を持つ。若い技師がそこに力を貸す。若者にはなぜか自分の愚かな恋の話ができるようになる。審美眼を持つ男だけの楽しみというプライドが、どんどん事実を見えなくしていく様が面白かった。用意周到なトリックを味わう映画ではなく、超一流の審美眼を持つ男が、己の目で見誤り完璧に破滅していく話であると思う。予測がつかない結末ではない。伏線が映像としてつみかさなっていくのがも白い。構図が一変する様は映像ならではの力であった。
全てをなくしたオールドマン。病院か施設なのか、車椅子に乗り口をきくこともない。そんな彼の頭の中で出かけている場所がある。クレアが唯一楽しい思い出がある場所と語ったチェコのカフェ。店中をうめつくす歯車というモチーフが残酷である。が彼女は現れるかもしれないとまだ信じている彼がいる。ありえないことだけど。それが愛なのか。
想像とは違っていたけれど、わたしにグットくるすごい映画でした。

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