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2014年3月27日 (木)

お祭りさわぎ

201404_4 夢の国歌舞伎座へ。俳優祭は「はいゆうさい」とおっしゃる方と「はいゆうまつり」とおっしゃる方がいらっしゃいました。とにかく「おまつり」でした。 まずは舞踊二題。 最初に六歌仙容彩を花形さんたちで。「遍照」は松緑さんの遍照に芝雀さんの小町。「文屋」は勘九郎ちゃん。「業平」は菊ちゃんの業平に七くんの小町。「喜撰」は染五郎さんの喜撰に時蔵さんのお梶。最後の「黒主」は海老蔵ちゃんの黒主に玉さまの小町と豪華。六歌仙は難しい。なかなかみていてワクワクしない。やはり難しかった。文屋の勘九郎さんがダントツに軽妙でみせたと思う。ほれぼれ。 黒主の絵のような華やかさにうっとり。黒主は短く感じました。これだけ豪華な顔ぶれだと、みている方も気がぬけません。 気が抜けないといえば、次の 素踊 楠公。振りつけの藤間勘十郎さんはすごい!総勢三十名にのぼる歌舞伎俳優による踊りに、それぞれに見せ場を作っていて舞台のあちらもこちらも気になりました。再生して何度もみたいほど。素踊りでしたので、所作の美しさや気品にうっとり。にすることがなく、おもしろかった。気品があります。最初は、楠木正成・正行親子の対話をじっくりと。橋之助さんの楠公。錦之助さんが品よく、そしてとても頼りになるようにみえました。又五郎さんが大きくみえしました。 後半は全員黒紋付で。宝塚の黒燕尾のようでとってもとっても格好よかった。もっとみたかった。若手の力量の差が激しい。感心したり心配したり。贔屓の心は大忙しです。 開場中が「いざ模擬店へ」と腰を浮きかけたところ幹部の御挨拶。藤十郎さん・菊五郎さん、吉右衛門さんが御挨拶。進行しつつ梅玉さんも。みなさま立派な肩書がありました。幕がしまり三津五郎さんの登場。元気な御姿にみな大喜び。やたらとロビーや売店の狭さと混雑の心配をされていました。昼の部で騒動でもあったのかしら。模擬店中に舞台で落語や歌謡ショーの披露まであったそうです。いざ!3階席を飛び出し、翫雀さんのバーへ。ブルースブラザースのTシャツをお召しのかっこいい翫雀さんかスパークリンングワインを。握手をしていただくと手が冷たいですよと。やさしい。石田純一のようにやさしい。横にはプリンセスのようにかわいい壱太郎くん。 いつもの写真売り場のスペースで中車さんがTシャツを販売。遠目にみると知的でさわやか。やだ格好いい。頭よさそうねーと同行のおさるに言うと、東京大学卒業ですよといばられました。本物すてきです。足をふみいれるのがはじめての食堂では、亀蔵さん・扇雀さんから始まり、京屋さん明石屋さんち、とびっしり俳優さん。向こう側は、勘九郎ちゃん、七くん、菊ちゃんの店が並び、大騒動。すごい熱気です。混雑のすきまからみてキャーキャー言う。御本人方がこんなに近くに(大きな人の壁があるけど)大集合しているとは。俳優祭ってすてきな催しものです。夢の食堂から押し出され、家六さん米吉くん。彌十郎さん新悟くん、男女蔵さん男寅くん、松江さん玉太郎くん、橋之助 という親子売店が並びます。みなさま以外と小柄。(彌十郎さん新悟くん親子を除く。)舞台ではあんなに大きいのに。買おうかずっと迷っていた印伝のお財布。売り子の橋之助さんから購入。先日ドラマで日銀総裁役でしたので、よりありがたい財布になった気がします。2階に下り、仁左衛門さんの元気な御姿をみて喜ぶ。千之助くんと孝太郎さんと3人でドリンクを発売。最後尾がみえないほどの列。1階で田之助さんのニコニコした様子をみてニコニコしました。心ここにあらずの笑顔の海老蔵さんが十蔵さんとTシャツ販売。そういえば食堂の菊之助さんも魂がぬけたような笑顔でした。人が集中して大変なのでしょう。せめて若者どおし一緒の店にしたら、もうちょっと元気に楽しくできるのではと配置まで考えながら楽しむ。人事権が欲しい。再び2階へ。完売の札が並ぶ絵や入札の隅どりを眺める。すでに金銭感覚がおかしくなっています。2階でTシャツを売る若者達がはしゃぎまくっ201404_5 て楽しそうでした。右近ちゃんやみっくんや歌昇くんに児太郎くん。あのあたりの若者がはしゃいでいてかわいかった。完売したと手締めをしたり。3階にもどり、食堂へ。残りの金券で芝雀さんから焼きおにぎりを。京屋さんのようなかわいこちゃんになれるかも。勘九郎さんから海苔巻を購入。一人ひとりに丁寧に対応。なんてすてきなのでしょう!おさるが菊ちゃんからワッフルを購入。汗をかくほどの盛り上がりでした。中車さんのコーナーにもどると売りきった若者軍団がおしよせていました。みんなと仲良く盛り上がっている姿をみながら、よかったねぇと焼きおにぎりを食べる我々でありました。 お楽しみ抽選会というのがありました。熊本への旅行券とディズニーシーだかランドだかの招待券。歌舞伎座の桟敷招待券とかだせないもんでしょうか、松竹さん。 最後に「鈴ヶ森錦繍雲駕」。豪華な雲助さま方に大興奮。でも汚すぎて、セリフをきくまでは誰だかわからない方がいっぱい。飛脚の左團児さんの居で立ちには参りました。さすが変態さん。駕籠にのった白井権八の金太郎くん登場。ちっちゃいのにおっとりしていて動じません。駕籠かきは染五郎さんに松緑さん。ちびっこ権八にどんどんかかっていく雲助さん達を楽しみました。そこへまた駕籠が。幡随長兵衛は大河くん。「お若いの、お待ちなせえやし」って。大河くんのかっこいいこと。誰よりもちびっこなのに、立派で人間としての貫録がありました。親分でした。セリフがきりっとしています。法被を畳んでもらったりしていても、おちついて待っていて、こういうものは人に畳んでもらうものかなと思わせる風情。みんなのうなり声がきこえるようでした。粋でかっこよかった。すっかり人気をさらっていきました。いい演目でした。 おさるとハマで一杯(一杯じゃないけど)のんで、反芻して楽しんで帰りました。あー幸せでした。楽しい祭をありがとうござました。

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2014年3月23日 (日)

空ヲ刻ム者

演舞場で、四代目市川猿之助によるスーパー歌舞伎II『空ヲ刻ム者』をみてきました。見終わって、確かに「スーパー歌舞伎セカンド」だと思いました。 スーパー歌舞伎のこしらえをすると、佐々木蔵之介さんかどうかちっともわからなくなりました。別人のような顔つきにみえました。このメンバーの中で、浅野くんの存在感がすごい。歌舞伎にのみこまれていないどころか、歌舞伎の波を軽くわたっていました。浅野和之ここにあり。花道の七三で一度立ち止まってから改めて歩くことが、こんなにも難しいことだとは知りませんでした。蔵之介さんや福士誠治さんが歩くとなんか違う。それっぽくしているけど全然違う。七三で違和感を覚えたことがなかったので、あれってすごい技術だったのだなぁと思った。 前川知大さんは新進気鋭の劇作家だそうですが、スーパー歌舞伎の世界感にのみ込まれていて特色を感じませんでした。とにかくスーパー歌舞伎でした。この納得する感じを見事に受け継いでいるのはすごい。このジャンルは継承されました。亀ちゃん(現猿之助さん)の間の取り方のうまいこと。自由自在に場を操っていました。 私は、「歌舞伎」が好きです。緻密に組み立てられ、しきたりに固まっているのに、時に荒唐無稽な方向に向いたり唐突に終わったりする。小難しいところろも型破りなところも好き。 対するスーパー歌舞伎は、とにかく素直。素直に物事を運びそれがクサくならない。かつ豪華。こういうジャンルを先代の猿之助さんが作り、一人でひっぱってきた。今は、新猿之助さんが同じようにひっぱれるし、猿之助なしでも成立するおもだか色ができあがっているのがわかった。納得しました。 私は、自分が好きな方の歌舞伎をみていくことにします。否定しているわけではないです。 3階の、宙乗りが収容されつあたりの席でみていたので行きつ戻りつしながら近づいてきたのがうれしかった。

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2014年3月22日 (土)

杉本文楽 曾根崎心中付り観音廻り

201404 世田谷パブリックシアターで、『杉本文楽 曾根崎心中付り観音廻り』をみてきました。3階の一番上から遠い舞台を見下ろす。
美術作品としてみるときれいで、興味深い。物語を語る義太夫の言葉が浮き上がってくるような束芋の映像も新鮮で面白かった。しかし、文楽をみるという点では功を奏しているとは思えなかった。場面を説明することを、極限までシンプルにすることにより際立たせていた。美しい。しかし文楽で最も大切なはずの儀太夫が、三味線が耳にはいってこない。場面に心情が乗ってこない。わかりやすいことで消えてしまう感情があるものだということを発見。外人さんにはオリエンタルなムードが受けそうだと思った。
文楽をみた歴は十数回なので、よくはわかっていないと思う。でも、国立劇場で鑑賞する文楽の本公演の方が私には驚きである。ごちゃごちゃしているようで、ちゃんと目が集中されるよう よく練られているものだと思いかえした。お初が床下の徳兵衛に思いを伝えるところがもっとももったいないと思った。シンプルにするが余り、床下の徳兵衛が目立ち息をつめ隠れているようにはみえなかったから。
つまらないことはない。とてもきれでした。鶴澤清治さんや、桐竹勘十郎さんの気迫を感じました。なにかにつけ、「それなのに、もったいない」と思った。

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2014年3月21日 (金)

鳳凰祭三月大歌舞伎 夜

20140321 春分の日に歌舞伎座へ。夜の部も鑑賞。
幕あけは、盲長屋梅加賀鳶  加賀鳶。本郷木戸前勢揃いに心をワクワクさせる。児太郎くんのセリフがちゃんとしてきたので安心。がんばれ。歌舞伎にもどってきた勘九郎さんをみて、やっぱりいいなぁと思う。3階なので花道に勢ぞろいしている様子は5人目からは声だけ。声の調子で鳶の風情を感じるのも、3階の楽しみ方のひとつです。
勢ぞろいのあと、汚いあんまさん達のお芝居になるとアレってつい思っちゃうのだけど、せこくて卑劣な悪按摩達が割と面白かった。幸四郎さんは道玄がよく似合う。だらしない女按摩の秀太郎さんも。ふぅーん。江戸っぽかった。
続いて勧進帳。富樫の菊五郎さんが真摯でよかった。吉右衛門さんの弁慶をはじめてみました。弁慶役者って、大きくて超人的で絶対に強いイメージ。でも、吉右衛門さんの弁慶は人間でした。いちかばちか、もしかしたらこの関を通ることができないかもしれない。こういう必死な弁慶をはじめてみました。これは吉右衛門さんの味だと思った。そうか、弁慶だって人間なのだものなと思った。四天王に、歌六さん・又五郎さん・扇雀さん・東蔵さん。頼もしい四天王。この四天王と力をあわせて、命を削って立ち向かう弁慶。心に残りました。 義経は藤十郎さん。翫雀さんが後見をされていたので驚きました。四天王の後見には種太郎くんがいました。なんだかジーンとしました。あまり気配は消せていなかたったけれど。
最後に、日本振袖始。この歌舞伎らしさにノックアウトです。稲田姫の米吉くんは少し固いところもありますが、初々しくけなげでした。岩長姫実は八岐大蛇の玉三郎さんの妖艶さ。人に非ずという存在感がすばらしい。美しいけど恐ろしい。素盞嗚尊の勘九郎さんの所作の美しいことといったら。ひとつひとつの形のきれいなこと。あぁ。歌舞伎ってすてきです。
そうそう、初日の昼の部をみたときのこと。 身替座禅の右京が花子の元から帰ってきたときに大向こうがかけた「お疲れさま!」は無しだと思う。台無し。

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2014年3月15日 (土)

ハイレッドセンター直接行動の軌跡展

観世能楽堂の後、松濤美術館へ。「ハイレッドセンター直接行動の軌跡展」をみてきました。区立とはいえ、300円とはお安い。ありがたい。
能楽堂で伝統にひたっていた後なので、ギャップの激しいこと。今みてもとんがっていました。突飛で繊細。細かく面白かった。紙幣のコピーってこういうことかと驚き楽しんだ。楽しむっていうのはちょっと違うけど。理屈を読むのがよかった。
若い人も、実際にその世代に体感した世代の人もけっこう来ていて面白い空間でした。

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古典への誘い

俳優祭の切符の引き取り期限の翌日だなぁ引き換え忘れた人がいるかもと、しぶとく電話をしてみました。休日なので電話できるわと。なんと3階席がとれました。やったぁ。行きたくてがんばって電話をかけていたのですが、切符をとることができてびっくりしました

今日は、松濤の観世能楽堂へ。伝統への誘い、能楽堂公演にいってきました。石橋と連獅子を続けて上演。能楽堂で演じることによる緊張感はかえ難いものがありました。能楽が笛座でふく笛の音と、歌舞伎の時にもう少し後ろに座り吹く笛の音が異なることが面白かった。おー音が違うと。
石橋は、後シテのみの上演。能のジリジリと気迫を感じさせる力が美しく、堪能。 海老蔵さんは、魅せることに重きをおくのでない動きで、とてもよかった。能楽堂の神聖さを感じる動きでした。必死の福太郎くんの真剣さも美しかった。贅沢な公演に大満足。いいものをみました。

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2014年3月 7日 (金)

MOMAT コレクション

俳優祭売り出し。電話予約に敗れる。昼休みに一心不乱に電話してみました。3階席は終わっていたのかなぁ。ダメならダメということだけでも知りたいものです

201403momat 仕事の後、職場からグングン歩いて近代美術館へ。MOMAT コレクション展と、泥とジェリーが気になっていたので。すばらしい展示でした。是非足を運んでと人に薦めたくなる。
MOMAT展のはじまりはアンリ・ルソー。とてもワクワクする作品。ラッパの音が聞こえてきそう。
日本美術の傑作が並ぶ。大正のはじめの、洋画ってものが入ってきて油絵をどうかくかたくましく挑んでいるころの作品がとても好きなので、そのころの素晴らしいものが並んでいてとても贅沢。萬鉄五郎、岸田劉生、中村彝らのたくましく濃厚な世界を楽しむ。加山又造の屏風2作品をたっぷりした空間で展示され大変美しい。
永久貸与の戦争画もしっかりとみる。藤田嗣治の《アッツ島玉砕》や《サイパン島同胞臣節を全うす》は、全体から叫ぶようなものがすごい。朝ドラが、ちょうど終戦を迎えるころになった。こんなところへ行くことになれば、命を落とすことがなくすんだにせよ、心にずっと忘れらないものがうえつけられてしまうだろうと思った。絵の力を思った。
写真の作品も面白かった。森山大道やジョセフ・クーデルカの作品は、人に興味をわかせる。奇抜とかそうきことでない力に興味がわいた。
「地震のあとで」というコーナー。大正12年9月1日関東地方を襲ったのは、マグニチュード7.9の巨大地震だったそうです。建物の倒壊・火災により、またたくまに東京の中心部がを荒廃させた。呆然とするほど何もない。時代を追って、そこから復興する様を足早にみることができるのですが、実際には長い道のりだという現実について考えた。
プロレタリア芸術運動のころの作品が面白かった。近代化の華やかさ、機械の力文明をうたいあげたもの、その底の部分にとどまらざるをえない労働者の視線。ハイライトの展示ながら、時代の移り変わりが面白い。
最後にモダンの作品も。映像作品で、ワンダーウーマンのものがあった。作品を鑑賞するのでなくワンダーウーマン自信を懐かしくみちゃった。「IADCのダイアナプリンス」って名刺を作った過去があるので。最後の作品は奈良美智というのも気に入りました。
特集の泥とジェリーも面白かった。
こんなにすばらしく楽しい展示が、常設なので420円。ありがとう。
帰りもグングン歩いて東京駅へ。寒かった。昨日の健康診断のバリウムがまだ身体の中に残っていたのでグングン歩き刺激をしてみた。どうぞ、出て行って!

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2014年3月 5日 (水)

『古書店アゼリアの死体』

明日は健康診断。今晩はプールでしっかり泳ごう。一晩だけの努力だけど。
このところ宮部みゆき続きだったので、ちょっと休憩。若竹七海の『古書店アゼリアの死体』(光文社文庫)を読む。
会話の軽さとか、とっつきやすさとか、突飛さとかから、軽いよみものなのかとちょっと思った。が、個性的な沢山の登場人物達が、ちゃんといりまじり、めまぐるしく事件は進み、どんどん展開していく。飽きさせない。ちゃんと入り組んでいて、軽いよみものと思ってすみませんと思う。
会社は倒産、人気をはくした企画は横どりされ、奮発して泊まったホテルは火災に遭い惨劇を見る。仕事も住むところも失った、ついてないとしかいいようのない相澤真琴は、海に行って「バカヤロー!」と叫ぶという非日常的なことをしようとした。その海に、死体が打ち上げられてきた。バカヤローと叫ぶために見知らぬ海に来たなどと、苦し紛れのような説明を警察の事情聴取でしなければならなくなる。そんな踏んだり蹴ったりの相澤真琴だけど、そのふらりと立ち寄ったはざきの葉崎の街で、きたばかりとは思えないほど、密接に人々とかかわっていく。
古本の雑誌を編集の時につちかったロマンス小説の知識力で、富豪である前田紅子に気に入られ、古書店アゼリアを検査入院中あずかることとなる。かなりマニアックなロマンス小説のクイズに解答することができるのに、次々に古書店で起きる事件は本の知識と関係ないことばかり。翻弄される。殴られたり逮捕されたり。とんでもないようだけど、仕事に手を抜かない相澤真琴は、同じく手を抜かず仕事するどころか、四六時中FM葉崎の放送に走りまわる千秋やその家族・仲間達と、怒ったり助けたり感情の起伏激しく付き合っていき、信頼関係が生まれる。淡い思いも。何もかも無くしたけど、いい仲間を得る。ほろ苦い思いも含めて、うわべだけでない人間関係ってものを築くことがなによりも贅沢な事だと思う。
紅子さんのキャラクターがとてもよかった。お金持ちで年配で、背中を伸ばして自分の生きてきた道に胸を張れるひと。流されず、自分の正義に忠実。姪の満知子さまやその娘のしのぶ、同じ裕福な家庭に生まれても、品位は異なる。背負うものの違いだけではなく。 育ちのいい人は、人からの目を気にせず自分のしたいことをする。人からどうみられるか気にすることに疎くなれる芯がある。という描き方がよかった。豊かな暮らしぶりよりも、そういう心の持ちようがうらやましい。(優雅で余裕のある暮らしにとてもひかれるけれど。)
最後にゾッとするような展開も隠れていて、ずいぶんと楽しめた。
物語の中の紅子さんの頭の中にあるロマンス小説の知識というものは、つまり全部若竹七海さんの知識であるわけなのですよね。どれだけ本を読んで かつ覚えているのでしょう。この覚えているっていうのがすごい。そして、精通しているって格好いい。憧れます。

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2014年3月 4日 (火)

『クロスファイア〈下〉』

引き続き 宮部みゆき『クロスファイア〈下〉』(光文社文庫)を読む。
相手が残忍な犯罪を犯し、かつ罰をあたらえらることから逃げおおせている。常人にはない力を持って生まれてしまったものがこの力をもって生まれてしまった意義を、制裁に見出す。それでも躊躇いを覚えずに焼き殺す淳子に感情移入し難いかった。引いてみてしまったいた。犯罪者は処刑することが正しくないのではと迷い始めるのが、自分にとって大切な人を得た時である。どうしてもなくしたくないもの。自分を犠牲にしても守りたいものに出会うったから、やっと理解できた感情が切なく、いとおしかった。
尋常でない残酷な犯罪が起こり、犠牲になった家族が、仇をとらずにいられない気持ちは誰でもがわかるようでそれは想像にすぎない。制裁を加えることにも嫌悪感を持つ。もし、自分の身に振りかかったら正義とは何かどう考えるであろうかなどいろいろ考えさせられた。
力を持って生まれてしまった青木淳子が、同じく力を持つ木戸に逢い、大切な人となる。終わりはどうあれ、その幸せに救われた。しっかりとした考察をするには、おだやかな暮らしというものが必要なのかもしれない。
宮部みゆきの描く、不思議な力をもつ登場人物たち。人に気味悪がられるので、心をひらくことができない。それでもその力を人を助けることに使おうとする。最後には、自分が手を貸したことを知られなくてもいいという無償の愛で。正義がどうであれ、人間をそう描くことに、胸が苦しくなった。

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2014年3月 3日 (月)

ギャラリーの作法

一年に一度しかみることのできない展覧会がはじまったので、仕事のあと息せききってギャラリーへ。
一般人は初日に行くべきではないのであろうか。私が存在していないような扱いに辟易とし、作品と向きあっても何かを感じとることが難しかった。こんなに楽しみにしていたのに。関係者しかいてはいけないところに、無理やりはいっていたのであろうか。その方が救われる。
別の日にいってじっくりと作品をみてこようと思う。

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2014年3月 2日 (日)

鳳凰祭三月大歌舞伎 昼

201403 歌舞伎座新開場柿葺落 鳳凰祭三月大歌舞伎 歌舞伎座松竹経営百年 先人の碑建立一年 という大げさな名目のついた歌舞伎座公演をみてきました。いってみたら初日でした。まずは、昼の部から鑑賞。
幕あけは、壽曽我対面。この顔ぶれならば、もっとよいはず。少々舞台が広くを感じてしまった。想像したよりも薄味なのはなぜでしょう。お一人づつきっちり演じているのに。
続いて身替座禅。本領発揮です。最近お疲れ気味なのか、少し覇気がなく心配でした。歌舞伎座新開場においての代役続きのせいですね。元気いっぱい。菊五郎さんの色気のある右京は情感たっぷり。憎めない愛らしさ。吉右衛門さんの山の神も、怖そうでやきもち焼きで。2人の顔併せは、おおらかさがたっぷりでさすがでした。千枝・小枝には、壱太郎くんと天才 尾上右近ちゃん。間違いないうまさ。天才 右近ちゃんは、南座でなくこっちに出ていたのですね。もっともっと出番が多くなって、底しれぬうまさをみせつけていただきたい。
続いて封印切。藤十郎はんの忠兵衛に、扇雀さんの梅川。八右衛門は翫雀さん。親子なのに藤十郎はんの若さはただものではありません。でもセリフが少々分かりにくい。ごちゃごちゃ言っている雰囲気に、充分味がありますが。翫雀さんの八右衛門は、意地の悪いゲジゲジ野郎というだけでなく、基本は友達という感じが出ていてそこが翫雀さんらしいなと思った。活舌がよくポンポン飛び出すいけずな会話の響きがいい。秀太郎さんのおえんさんのきっぷのよさもよかった。治右衛門の我當さんは、じっとしていても風格がありました。 大変なことをしでかしてしまってからの忠兵衛の落ち着きの悪い肝とあきらめきっているけど不幸そうでない梅川の感じはさすが。ベテランの芝居をみせていただきました。
最後は、一番楽しみにしていた二人藤娘。場内がまっ暗になりいやがうえにも期待で胸がいっぱいになります。ぱっと明りがはいったときの別世界感のあることったら。おぉーとみんなの口から同じ息がでていました。大きな藤の花の元、舞台と花道七三に藤の精がただずんでいました。気になっていた1月の松竹座で上演していた二人藤娘、歌舞伎座で上演してくれてうれしい。この藤の精達の魅惑的なことといったら。玉さまは七くんに負けず愛らしく可愛らしく初々しかった。どうなっちゃているのでしょう。お姉さんと妹でなく同級生がきゃっきゃっしているようでした。はしゃいだりしっとりしたり。あっという間でした。あぁ。

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2014年3月 1日 (土)

『クロスファイア〈上〉』

2月はウカウカしないぞと思ったが、こんなもんじゃダメだった。3月は必死に。

宮部みゆき『クロスファイア〈上〉』(光文社文庫)を読む。「燔祭」は、クロスフィア序章であったらしい。念力放火能力を持つ青木淳子。否応なく持ってしまった自分の能力。このような奇特な能力を持って生れてしまったらどうするか。どう折り合っていくかを真剣に考えた青木淳子の行動を、ただ暴力とはだれも思わない。一途さがある故、落とし所がわからない。想像を超える残忍な行為のため殺された人がいる。残された家族を思う。法をうまくたちまわり、罰せられることのない人の仇をとるということで、この能力を活かす道を見つけた時、それは希望になることがよくわかる。
生活の中に納得のできないことがある時期に読むと、眉毛が焦げる程度のちょっとした発火くらいなら起こしてやりたい気がしてくる。能力を持つ怖さや哀しさがイヤという程伝わってきているのに。とどめをさすほどでない、軽いしかえしをしたいという気持ちはそこここにおちている。自分の中にもある。
読んでいるうちにいやになるほど残酷な描写もあるが、読む手をとめられない。〈下〉に続く。

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