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2014年3月 5日 (水)

『古書店アゼリアの死体』

明日は健康診断。今晩はプールでしっかり泳ごう。一晩だけの努力だけど。
このところ宮部みゆき続きだったので、ちょっと休憩。若竹七海の『古書店アゼリアの死体』(光文社文庫)を読む。
会話の軽さとか、とっつきやすさとか、突飛さとかから、軽いよみものなのかとちょっと思った。が、個性的な沢山の登場人物達が、ちゃんといりまじり、めまぐるしく事件は進み、どんどん展開していく。飽きさせない。ちゃんと入り組んでいて、軽いよみものと思ってすみませんと思う。
会社は倒産、人気をはくした企画は横どりされ、奮発して泊まったホテルは火災に遭い惨劇を見る。仕事も住むところも失った、ついてないとしかいいようのない相澤真琴は、海に行って「バカヤロー!」と叫ぶという非日常的なことをしようとした。その海に、死体が打ち上げられてきた。バカヤローと叫ぶために見知らぬ海に来たなどと、苦し紛れのような説明を警察の事情聴取でしなければならなくなる。そんな踏んだり蹴ったりの相澤真琴だけど、そのふらりと立ち寄ったはざきの葉崎の街で、きたばかりとは思えないほど、密接に人々とかかわっていく。
古本の雑誌を編集の時につちかったロマンス小説の知識力で、富豪である前田紅子に気に入られ、古書店アゼリアを検査入院中あずかることとなる。かなりマニアックなロマンス小説のクイズに解答することができるのに、次々に古書店で起きる事件は本の知識と関係ないことばかり。翻弄される。殴られたり逮捕されたり。とんでもないようだけど、仕事に手を抜かない相澤真琴は、同じく手を抜かず仕事するどころか、四六時中FM葉崎の放送に走りまわる千秋やその家族・仲間達と、怒ったり助けたり感情の起伏激しく付き合っていき、信頼関係が生まれる。淡い思いも。何もかも無くしたけど、いい仲間を得る。ほろ苦い思いも含めて、うわべだけでない人間関係ってものを築くことがなによりも贅沢な事だと思う。
紅子さんのキャラクターがとてもよかった。お金持ちで年配で、背中を伸ばして自分の生きてきた道に胸を張れるひと。流されず、自分の正義に忠実。姪の満知子さまやその娘のしのぶ、同じ裕福な家庭に生まれても、品位は異なる。背負うものの違いだけではなく。 育ちのいい人は、人からの目を気にせず自分のしたいことをする。人からどうみられるか気にすることに疎くなれる芯がある。という描き方がよかった。豊かな暮らしぶりよりも、そういう心の持ちようがうらやましい。(優雅で余裕のある暮らしにとてもひかれるけれど。)
最後にゾッとするような展開も隠れていて、ずいぶんと楽しめた。
物語の中の紅子さんの頭の中にあるロマンス小説の知識というものは、つまり全部若竹七海さんの知識であるわけなのですよね。どれだけ本を読んで かつ覚えているのでしょう。この覚えているっていうのがすごい。そして、精通しているって格好いい。憧れます。

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