『ピエタ』
『ピエタ』表紙にひかれて手にした、大島真寿美『ピエタ』(ポプラ文庫)を読む。 ほんとうに、ほんとうに、 わたしたちは、幸せな捨て子だった。 18世紀のヴェネツィア。作曲家ヴィヴァルディのころの時代。冒頭で、ヴィヴァルディが亡くなる。ピエタ慈善院にもその訃報が届く。ピエタとは、十字架 から降ろされたキリストを抱く聖母子像でなく、ヴェネツィア共和国にあった公式の女の赤ちゃんの捨子養育院兼音楽院のことであった。思いは通ずるものがあるであろうが。捨子達はピエタの娘と呼ばれた。礼拝堂を持ち,音楽活動をして資金を得ている。ヴィヴァルディはそこの司祭であり,音楽教師であった。冒頭からすーっとこの設定が染みてきて、静かに物語が始まる。お話の語り手は、エミーリア。ヴァイオリンの名手であり、音楽の才能にあふれた親しい友アンナ マリーアと共に、ピエタで職を得、ピエタで生活し、ピエタを守っている。 才能に嫉妬するわけではない。エミーリアは自分ができる仕事を淡々に行う。書記として、様々な仕事をこなす。 静かな暮らしは、ヴィヴァルディが亡くなることで少しづつ歯車が動いていく。ヴィヴァルディ先生に書いてもらった一枚の楽譜の謎に導かれ、エミーリアは、いろいろの人々と関り、その人の心に秘めてきた過去の出来事に向き合うことになる。自分自身の蓋をしていた心の中とも。慈善院という聖なる場所と俗世。真実と虚構。波乱にみちた出来事も、エミーリアの語りというフィルターを通すことにより 静かな調和が生まれる。天才の友アンナ マリーアではなく、ピエタで共に音楽教育を受けた幼馴染の貴族令嬢ヴェロニカでもなく、エミーリアであるからこその世界を感じた。大作曲家ヴィヴァルディも、ピエタではヴィヴァルディ先生であった。 『ヴァイオリンは楽しいかい?』 孤児のエミーリアにかけられたヴィヴァルディ先生の言葉。そういう財産により、生きていることの喜びを積み重ねていく。どこに生まれても。 恋も夢もすべてが叶うわけではない。ピエタ慈善院は、よりよく生きることを教えるところであった。 未亡人となって実家で扶養される裕福ではある令嬢ヴェロニカ、年を重ねた聡明な高級娼婦クラウディ。2人とも あきらめるのでなく、折り合いをつけながらよりよく生きるエミーリアと接することで、想いと現実が調和していく。あきらめるのでなく、受け入れる。折り合いをつけることは我慢でなく、そういうものなのだ。きちんとするべきことをしていれば、人を羨んだり比べたりしないでいられれるのかもしれない。 ヴェロニカがヴィヴァルディ先生からもらったものに、音楽に、上質な幸せを感じた。紡がれていく物語は、いとおしく美しかった。
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コメント
はじめまして


ヴィヴァルディの小説『ピエタ』メチャクチャ有名ですね

私も『ピエタ』の本メチャクチャ大好きですよ


特にお気に入りは作曲家ヴィヴァルディと愛弟子のアンナ・マリーア(≧∇≦)バイオリニストのお二人にメチャクチャキュンって感じます(o^∀^o)



投稿させていただく上原よう子と申します☆(*^▽^*)☆
イラスト姿のヴィヴァルディ先生がメチャクチャカッコ良く、イケメン姿が超お気に入りです(b^▽^)b☆d(^▽^d)
投稿: 上原よう子 | 2014年5月21日 (水) 21時11分
前『世界の日本人妻』の番組で作曲家ヴィヴァルディの生まれ故郷イタリアのベネチアが放送されてましたよo(^-^)o
自転車や車禁止はとても驚きです\(☆o☆)/

ほとんど船で移動は凄いなぁと感じちゃいます
いつかはイタリアのベネチアに行きたいです☆(*^▽^*)☆作曲家ヴィヴァルディ率いるピエタ合奏団は本当に凄いなぁと感じちゃいます
ヴァイオリンやヴィオラはもちろん、リコーダー等の楽器を使って楽譜のパートを組み合わせる等ヴィヴァルディって本当に名プロデューサーだなァって感じますo(`▽´)oピエタ合奏団は本当に恐るべしです
ヴィヴァルディの作曲家の腕前とアンナ・マリーアの演奏家の腕前と比べたら私なんかは見習い以下に感じます
(ロンブー淳と狩野英孝なんかは作曲家レベルはなんと一流です
)私は作曲家と言うよりリコーダーの演奏家がメチャクチャ得意です☆(*^▽^*)☆


投稿: 上原よう子 | 2014年8月14日 (木) 20時49分
はじめまして
コメントありがとうございます。表紙にひかれて買いましたが、中身も大満足。今、音楽の授業を受けたらまじめに勉強すかもしれないなぁと思いました。
投稿: マイチィ | 2014年8月28日 (木) 23時45分