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2014年4月29日 (火)

『ひまわりの祝祭』

藤原伊織『ひまわりの祝祭』 (講談社文庫)を読む。やはり男の生き様と精神的な愛情が描かれている。そして同じく現実は厳しい。
世捨て人となっており男が、自分の大切な人の関わる事件の真実を知ろうとする。知りたいのは犯人でなく、真相。そこも同じなのだけれど、飽きるどころでなくそこがいい。自分さえよければそれでいい人が多すぎる世の中だからでしょうか。人を蹴落としてまでという程の悪人でなくとも、運が悪いのは自分でなければよいという人はうじゃうじゃしている。
自殺した妻は妊娠を隠していた。このキーワードが重い。人と関わらず、働きもせず生きるようになった主人公の秋山は、義理難く彼らの独自の世界のしきたりが浸透しているやくざと、半端なチンピラのようなやくざと、闇の大物と、昔の会社のスポンサーなど 普通の人の暮らしよりも大げさでやっかいな世界に引き込まれていく。その上、亡くなった妻が幻のゴッホの「ひまわり」と関わりがあるという。展開だけをあげると突拍子もないようだが、細かく展開していく様と、文章でどんどんと引き込まれていく。さすがです。男の美意識が鼻につかないのは、まったくもって文章の力だと思う。裏社会の人は裏だけで生きていこうしている潔さのようなものも。
朴訥で生きるのが下手な男に、妙にものわかりのいいできる女。成就することのない精神的な繋がりに、うーんと思いつつもよかったと思う。
ゴッホがもう一作あったのではという謎解きも陳腐にならず、面白かった。すごいなぁ藤原伊織。

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