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2014年5月30日 (金)

篠山紀信 今様歌舞伎役者図絵展

篠山紀信が撮る歌舞伎役者絵巻百花繚乱みたいな展示が、終わっちゃう。最終日ギリギリに駆けこんでみてきました。大手町駅直結の大手町ホールの3階、よみうりギャラリー。吹き抜けの前の通路にずらっと60枚のパネルが並ぶ。30枚づつ上下に。上下で兄弟になっていたり(市蔵さんと亀蔵さん)ウコン並びがあったり(尾上と市川)ちょこちょこ面白かった。以前いったトークショーで、見得をきる前の瞬間を撮るというようなことを言っていました。止まってからの形を撮るのではないと。うまいっていうのは失礼だけどうまい。実にいい表現のところという写真でみあきませんでした。もっと早くみにいっておけば・・・もう1回2回、何回かみたかったなぁ。無料でこんなに立派なものをみせてくださってありがとうございました読売新聞さん。

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非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品

篠山紀信 今様歌舞伎役者図絵展をみたあとに、上野へ。国立西洋美術館にて「非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品~Voices Calling from the Unusual: Hirano Keiichiro’s Selection of Western Art Masterpieces~」をみてきました。同時に、「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」展も鑑賞可能らしい。観覧料金:一般600円。こんなにたっぷりとしていて、いいものもあって、面白くて600円!めちゃくちゃ混んでもいない。とてもお得でした。ありがとうございました国立西洋美術館さん。 日曜美術館で、 平野啓一郎が作品を紹介していたのでそれは何故かしらと思っていたらゲストキュレーターとして選出されたためでした。東京都美術館へバルテュス展をみにいった帰り、そういえば気になっていたことを思い出す。次の夜間延長金曜にチャレンジ。カロの版画は、細かくてくたびれそうだったので先に平野啓一郎をみたいと受付で言ってみると、エレベーターで次の展示場所へ出ると教えてもらう。いろんな要望に答えられるようになっているのですね。平野啓一郎が選ぶ32点の西洋美術の名品。その区分も、解説も彼によるもので、なかなかおもしろかった。非日常の光景あるいは非日常の世界へと誘う光景を描いた作品という選択らしい。宗教画なんて、どれも非日常のような気がするが・・ 展示の空間の作り方も面白かった。アルブレヒト・デューラーの『メレンコリア I』が、ものすごく気になった。こういう並びで展示されていなかったら、いつもならそんなに見なかったかも。まんまとひっかかり、そのことを楽しんだ。32点という分量もよく、気に入りました。いい企画。

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ジャック・カロ

平野啓一郎の世界の後、展示室を入口までさかのぼる。「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」を鑑賞。むしめがねで見ている人がいるなぁと思ったら、入り口においてありました。わたしもむしめがねを片手に散策開始。奇想の劇場ってと思いましたが、なるほど劇場です。独特の世界。あきれるほど細かい。細かいものを、むしめがねで拡大してみると夫人のスカートのレース感とか、もういろんなものがきちんと創られている。指で拡大する昨日の画面も。村の方隅でイスをふりかざしている人や、おさえつけられて歯を抜かれている人。ガヤガヤとした喧騒を感じます。モノクロの世界なのに。戦争を取材したものは、拡大しみるのには気が重くなるほどせまってくるものがありました。ものすごい人です。便利な世の中には、絶対にこんな技量を持つ人はうまれない。豊かな創造性も。便利って何かをなくしている。最上のコツコツに驚く。

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2014年5月25日 (日)

團菊祭五月大歌舞伎 夜の部

1405_6 千穐楽に、1階からじっくりとみてきました。舞台に近いって贅沢。
「矢の根」松緑さんの五郎は、おおらかで荒唐無稽な世界がよく似合っていた。 バカバカしいほど大きな矢の、根を砥ぐ。そういう設定をおおらかにみせていた。せっかく、キリっとしめてきた太い襷を、初夢を見るために横になるためにはずす。夢枕に兄の十郎が現れ助けを求めるので、スワ一大事とまた仁王襷をかける。それを舞台上で行うので、後見大活躍。襷をパッと床に伸ばした時にドスンという重い音がした。いろんなところが面白い演目。馬士畑右衛門は橘太郎さん。駆け付けるためにと、商売道具の馬を取り上げられ引っ込む時にクルッと回っていたことに気が付きました。ほうっ。乗っていた大根を斬り落とし、馬の背中に乗る五郎。親指と人差し指の間で縄をはさんで掴んでいたことを発見。ほうっ。楽しかった。
「極付幡随長兵衛」思ったよりもずっとずっとよかった。(どう思っていたのか・・・)長兵衛を演じると、團さまの面影が出るとことろがあった。 十二世市川團十郎一年祭として、選ぶのに相応しい演目ということを実感しました。初日にみたといには、俠客道を貫く俺!別れる俺!俺にちょっと酔っているかなと思いましたが、それを払拭しました。男気あふれる男でした。身分差がはっきりした時代に、武士でなく、堅気でもない町人。芝居小屋で、舞台をとめてクダをまく武士に、節度をもったように扱いつつも、理不尽なものを許さない。堅気のみなさんに御厄介をかけちゃあいけないと正義を通す。実に人気の出そうな男である。水野の屋敷から迎えがくる。あわてる子分や家のものを静かに制する。こういう稼業をしていたら死ぬことは避けられない。そういう覚悟をもって生きてきたのだとハっと思わせるものがあった。 水野のやり方は、ほめられたものではない。でも、男っぷりの良さにが面白くない。旗本だからこそ上からの圧力も、プライドもあり、上の身分のもの(長兵衛にとっての武士)を圧倒する度胸はないのだ。しかも市井で人気がある。気に入るはずがない。あいつをのさばらせておくのかと、旗本のやつらも押さえなくてはならない。男気あふれる男を、権力という卑怯な手で陥れる。断れないように仕向けても、あっさりと受け入れる。その覚悟に、殺すには惜しい男だとつぶやき、最後は手を合わる。ちょっと水野の気持が分かった気がした。菊五郎さんなので器の大きさがわかる。好きにはなれないけれどね。
長兵衛に海老蔵さん、唐犬に松緑さんという組み合わせなので、俺に何かあったら唐犬に従えば大丈夫だという信頼関係がわかりやすかった。俺の命なんか惜しくねぇといろめきだつ子分達。若くてちょっと可愛かったりもすれうけど、真剣に詰めよっていてみていて気分がいい。群をぬいていいのが天才右近くん。座った時に、襟もとの肌のさらけ具合といい、前傾ぎみでいつでも飛び出せる姿勢といい、鋭い目つきといい、子分の中ではピカ一だと思う。なかなか楽しめる極付幡随長兵衛でした。
「春興鏡獅子」圧倒の弥生でした。大変そうに踊っていない。玉三郎さんのようです。大変さを感じさせないところが。恐るべし菊之助。心根が女子です。そりゃ殿のお気に入りになるなぁと。ちょっとしたたかさもあって。完璧に計算されていたように思う。驚きました。
後見の右近さんは無駄なくあまり目立たずに動く。春興鏡獅子をぜひみてみたい。

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2014年5月24日 (土)

團菊祭 昼の部 3階

母の日&父の日と称し両親と歌舞伎座へ。自分は1階の1番前でみたのに、招待するとなると3階になってしまいます。勧進帳があるので花道が割とよく見えるところからみてきました。何回みても飽きません。勧進帳で、最後に弁慶が花道を引っ込む際に柔らかい声で「ゆっくりとお願いします」と大向こうがかかる。こういうの好きではない。若いから、強引な程必死に最後まで突っぱしってきて、なんとか義経を守りきった。どこまで先に進むことができたかと目をこらしてみている。緊張感が台無しになった。あの場にいた全員が不快に思ったわけではないと思うけれど、身をのりださんばかりに観客を集中させた状態で、それを分断させるような大向こうはあっていると思えない。声も悪けりゃ言葉も適切でない。怒っていちゃもったいないので、たっぷり楽しんだけど。私が、怒りっぽくなってるのかなぁと自らを振り返ってみたりもした。 魚屋宗五郎で、カラっと明るい気分になりました。
1405_5 終演後、屋上庭園へ。そしてまたまたミッドタウンへ。この間は寒くて楽しむことができなかった森薫る白州バーへいってきました。芝生の上に用意されたバー。夕暮れ前でまだ明るく、風が気持いい。燻製の料理もおいしく、白州森薫るハイボールは結構濃くたっぷり。わざわざ六本木とちょっと渋りぎみでした両親もご機嫌でした。

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2014年5月23日 (金)

バルテュス展

金曜夜間延長をしているの東京都美術館へ。バルテュス展をみてきました。前回訪れたところ大混雑でしたので日を改めての再挑戦。そこそこの人出でゆっくりたっぷりと鑑賞することができました。
国内最大規模、没後初の大回顧展 バルテュス展の決定版と名をうたれていただけあり、これだけたっぷりとバルテュスだけを味わうことができて面白かった。
少女、猫、鏡というモチーフを得て、独特の世界観が濃厚になった。少女の中にある、あどけなさとそれだけでない巧妙さ。少女だけどその中ではじまりかけている女性さ。直視しにくいような瞬間がドキっとしてよかった。しばしば誤解を生むと説明があったが、わからないものを何かの枠にくくろうとしてしまうのは仕方がないことだと思う。誤解を生むくらい、挑発的である。観ている方も、これを堂々とみていていいのかとちょっと思わせるところがよかった。11歳のバルテュス少年が描いた、可愛がっていた猫の「ミツ」がいなくなったデッサンは、子供の書いたというものを越えてすごかった。その40枚近い枚数もすごい。母の恋人であったリルケにその作品をみせ、本となる。もう、どこもかしこもすごい。母の恋人?それがあのリルケ?ポーランド貴族の血を引くバルテュスの父は美術史家、母は画家、兄は小説家・画家でサドやニーチェの研究家としても知られるピエール・クロソフスキー。揃いすぎた環境の中、独特の世界に進む。閏年の2月29日生まれというところまで、普通じゃない。凡人は、狂おしいまでの思いを理解を越えた世界で描く芸術にあこがれる。バルテュスは、まさにその人だ。
《 夢見るテレーズ 》は、ポスターにとりあげられた作品。写真でもインパクトがあるのに、本物はもっとすごい。
《 鏡の中のアリス 》は、友人の妻がモデルとのこと。テレーズは隣人だった失業者の娘テレーズ・ブランシャールであり、《 白い部屋着の少女 》は、義理の姪フレデリック・ディゾンである。誰がモデルかはっきりしているには、はっとする作品だ。
モデルと画科の親密な空気を感じる。出会ったころの節子にも、底しれない魅力を感じた。残酷なようだが、晩年に出会わなかったら、最後を看取る人にはなれなかったのではないかと思った。次に自分が夢中になるものをみつけたら、今もっていrものを手放すのに、ためらいがないように思った。そこまでひとつの対象にのめり込んでいると思った。
だからこそかっこいい。アトリエの吸い殻のおかれた灰皿ひとつとってみてもかっこいい。芸術家ってみんな変態なのだと思う。乱暴な言い方だけど。そして、芸術が好きな人は変態に憧れてる。そんなことを思いました。良かった。

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2014年5月18日 (日)

フランス印象派の陶磁器

ハ゜ナソニック汐留ミューシ゛アムへ。フランス印象派の陶磁器 ~1866-1886シ゛ャホ゜ニス゛ムの成熟~をみてきました。友にいつも感謝です。
日曜美術館の北斎漫画の際に、紹介されていた皿だったので本物をより興味深くみました。どうしてこの部分とこの部分をひとつのお皿に配置したのでしょう?と不思議におもいつつみる。日本風と日本人が創りだしたものの違いが面白い。展示方法もよかった。壁でじっくりと図柄を楽しんだり、テーブルセッティングしてある組み合わせを楽しんだり。ルノワール(もちろん本物!)がさりげなくかけてある。こうやって本当に晩餐会をひらいていたのだなぁと想像しながら鑑賞。写真をとるポイントの足形があるのが面白かった。何も持たないで会場に入ったので、写真を撮っている人の画面をそっと覗いたりしてみました
傘張浪人と、傘を突き破る雀という構図の斬新さにやられました。

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團菊祭 昼の部

1階から、じっくりとみてきました。舞台に近い贅沢を満喫。 若手も活躍している毛抜、巳之助くんは雰囲気がよくなりました。梅枝くんが手固くうまい。廣松くんが初々しくみえました。男寅くんがんばれ。團蔵さんの八剣玄蕃は、ザ悪役でした。左團次さんの毛抜はおおらかで、腰元や若衆に言い寄っては振られるところがぴったり。自然と笑いが起こるという魅力。後見の働きっぷりも見どころでした。左升さん、蔦之助さん、それと咲十郎さん。 勧進帳。菊之助さんの富樫が、ぐいぐいと問うてきて掛け合い感がでてきました。花道のすぐそばなので、出の四天王の声のよさにほれぼれしました。亀亀兄弟の声のよさは知っていましたが萬太郎くんもいい声。富樫が去り、打擲までして救おうとした弁慶に義経が手を差し出すところが温かく、立ち位置を替えただけで位の高さがでていました。弁慶さんは延年の舞が晴れやかでよかったです。花道で杖をドンとつく迫力がすごかった。打ち殺されるかと思いました。最後に六法で去っていくときの弁慶は、出の弁慶より年をとってみえました。毎日、命をかける思いで演じているのだなぁ。後見の右之助さんがキリっと頼もしかった。太刀持ちの福太郎くんも、丁寧でした。やっぱり、前でみると迫力があっていいなぁ。 最後は、魚屋宗五郎。本当にすばらしい。さすが。菊五郎さんの宗五郎。花道を沈んで入ってくる。気配を消し、しんみりする。酒がはいり、変わっていく様のしょうがない感じが見事。おはまに、もう一杯とせがむところ。もう、誰がいっても聞く気のないのみっぷり。あーいそう。仕方の無い人になっても、そこは江戸っこ。気のきいたことをいいます。飲んでいけない酒ならもってくんな、このおたふくめ。しょうがない人なのに笑っちゃう。よーくみていると、三吉が宗五郎とおはまの間に入り、もっていた酒桶を奪われ、見事に無駄のなく、そして理にかなった動きになっている。菊五郎・時蔵・橘太郎のみごとな間と動きとセリフで、ポンポンポンときれいにはまっていく。とこどどころで、 團蔵の繰り出す「おーい飲んでるよ」のセリフも効いていいる。うまい人たちの織りなす最高のコンビネーション。いい気分です。おなぎちゃんの梅枝くんは、そんななかに入っていて違和感なく達者でした。幹部に昇進した橘太郎さんの小奴三吉は、思ったことをすぐに口に出しちゃう軽さと若さと愛嬌がある。團菊祭にあたり、本物の芸をみせてもらいました。いい気分になる魚屋宗五郎でした。

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2014年5月16日 (金)

七世竹本住太夫引退公演 国立文楽劇場開場三十周年記念

1405 国立文楽劇場開場三十周年記念。国立劇場で文楽をみてきました。七世竹本住太夫引退公演。第一部はとれなかったので、残念ながら住太夫さんの語りを聞くことは叶いませんでしたが、第2部をじっくりと鑑賞してきました。
女殺油地獄と鳴響安宅新関。どちらも大迫力。会場は満員御礼で大賑わい。熱気にあふれていました。1番前の席から負けずに熱く鑑賞。
女殺油地獄は、以前にも一度国立劇場で観ました。再び驚く。徳庵堤の段。8人の太夫がずらっと並び三味線は一棹。これがどういう塩梅を意味するのか。文楽はまだまだわからなく、とても面白い。河内屋与兵衛を遣うのは勘十郎さん。登場しただけで放蕩息子感が出る。お吉は和生さん。茶屋の店先で姉のように意見をしてたしなめる。うるさがりながらも、若い女に甲斐甲斐しくされる様を友達の手前 面倒がりながらも芯からはイヤがっていないように見える。贔屓の小菊が、自分を袖にして他の客と野崎参りをすることに腹を立て、友達をつれていちゃもんをつけに行きくだらに喧嘩をする。同情できる点がひとつもない、とにかく浅はかな青年である。それを、どこかカッコよくも見せてしまうところがすごい。河内屋内の段で、その浅はかさは迷惑という域を越えていく。気に入らなければ暴力をふるい、その場しのぎの嘘をつく。人を強く憎むあまりというわけでもなく、お吉を奪いたいほど愛するわけでもない。世間にいらだちを覚えているわけでもない。ただ放蕩息子なのである。こんなにいい両親や妹がいてもどうにもならない。この先の凄惨な場を知っていてもなお、そんな与兵衛を嫌いにならないのは、すごい組み立て方だと思った。最後に、豊島屋油店の段。この冒頭で、立ち酒を飲むことの縁起の悪さについて触れる。この場がとても印象に残っていて、立ったままとりあえず一口飲むことがイヤになる。人がしていても。立ち酒飲んで誰を見送りというお吉自身が見送られることになるとは。この伏線の引き方に、言葉の力を感じる。知ることってこういう楽しみを得ることです。女殺油地獄。まさにこの演目の世界が広がる。親に借金を背負わさないために殺らなくてはならない。無理やりなきっかけを作り狂喜のスイッチが入る。歌舞伎で生身の人間が油ですべりながら逃げ、刺すのもすごいが、人形もすごい。確か3人で一躰を遣っていたはずなのにどうなているのかと思う一体感で、逃げ追いつめる。とうとう手にかけてしまった後、戸口の柱に寄り掛かる姿は人形とは思えなかった。命を落としたお吉をおいて、そっと人形遣いが去る。そこにおかれた人形は急に生気を失う。文楽ってすごい。ちょうど、豊島屋油店の玄関の戸口の前の席だったので、なんともいえないやってしまった感を、与兵衛と共に味わった気になった。
休憩をはさみ鳴響安宅新関。先ほどの迫力に負けない大迫力。ずらっと並ぶ三味線。幕がひらくとずらっと義太夫も並んでいて、それだけでホゥと声が出る。歌舞伎の勧進帳をよくみているので、微妙な違いや、人間でないと思えない気迫になんどもなんども驚く。弁慶のなんと大きいこと。弁慶の左遣いと脚遣いは顔を出して遣っていました。どういう約束毎があるのでしょうか。主遣いが合図を出すとのことですが、その合図がまったくわからない。どうしてどうするべきなのかちゃんとわかるのであろうか。話にも引き込まれるし、その操作へいきつく技にも引き込まれる。語りも三味線も引きつける。とても重厚で、濃いのだけどあっという間のような、濃密な時間でした。とにかく驚いていました。飛び六法にも。感謝や、安心の思いがあふれた延年の舞にも驚いた。
まさに、鳴り響くでした。帰り道、ずーっと床本を読みながら頭の中で再現させ続けました。なんて面白いのでしょう。もうびっくりです。

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素王の人 十二代目市川團十郎

文楽をみるために半蔵門にきたので、よい機会とJCIIフォトサロンにいってきました。薄井大還作品展「「素王の人 十二代目市川團十郎~時空の愛 芸の伝承~」という写真展をみてきました。日本カメラ博物館の隣のビルの1階にあるフォトサロン。小ぶりな空間でしたが、丁寧にまもってきたサロンという雰囲気がありました。ちょうど、誰もいないタイミングでしたので1点づつゆっくりと眺める。最初の暫の顔の写真が、とてもよかった。ああ、これが私の思う團十郎だと思った。昔の写真に、お若いとつぶやいたり。楽屋の鏡台前に、團十郎・新之助2人が並んでいる写真がありました。父の姿を観、倅を見守ることのできる その幸せになんだか泣けてきてしまいました。ああ幸せだったなぁと。今の海老蔵は必死に走っているけれど、方向が少し違うと思う。気がついてくれるのを待っています。バスローブをきた團十郎とちびっこの時の今の海老蔵の写真は、時おりみる。この写真は本当にいい。別世界に住む人っていう感じでている。歌舞伎役者には、神秘の部分を持っていてもらいたい。贔屓としてはね。ただならぬ人達だからこそ、その人達の舞台は時代が江戸にぽーんと飛んでいくことができる。
写真は一瞬を切り取っただけなのに、そこには人間性がみえた。それがプロの腕なのかもしれない。團十郎写真には、品格があった。人間性は、でてしまうものだと身を引きしめた。ちょっとだけ。楽屋に、先代の河原崎権十郎さんが訪れた写真があり、この人が舞台にでていたらどんなに格好いいだろうと思った。楽屋で4人で座布団を囲んで座っている写真は、隣には十八世勘三郎。ああ。そして若い。UNOをしていてほほえましい。襲名の成田山の写真、チビの新之助くんに近所のチビッコが近寄る。その姿を微笑んで見守る團様や希実子奥様など幸せいっぱい。みんなの応援の熱気も伝わるいい写真でした。永山会長や、お若く髪がたっぷりの左團児発見なとみどころいっぱい。
生きている姿勢は写真に現れることもわかりました。モノクロの写真からあふれる風情もよかった。

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2014年5月 9日 (金)

コメ展

1405_3 プチ休暇。明治座で歌舞伎鑑賞の後、六本木へ。21_21 DESIGN SIGHTにて、コメ展をみてきました。期待していきました。変わっていて、とっても楽しかった。平日の夕方ということもあり、場内はさほど混んでおらず、かといってさみしい程でもない。程よく贅沢。米編の漢字のスタンプを使った、運勢占いが一番楽しかった。自分のとおさるのと、読み比べて3倍楽しかった。ハンズオンの企画がいっぱいで、みて触って楽しい。うちわで画像に風を送り、映像のごはんを炊く。はじめちょろちょろなかパッパ、2人で力いっぱいパタパタしましたが、できあがったのは「おかゆ」でした。 藁をつかったおめでたい飾りに感心したり。日本酒のラベル展示のアイデアもすばらしい。お米に字を書く体験もできます。お米の立体感に驚く。書くのって難しい。4文字書きたかったのだけど。一文字かいたら、もう半分くらい埋まっちゃいました。2文字書いて、提出してきました。般若心経を書く人のすごさが少しわかった。最後に自分が真ん中の線を作り、米という漢字を完成させるボードの前に立ち、「米」となってきました。アイデアいっぱいで楽しかった。 1405_4
ザーっと大雨が降った後、陽がさした芝生で森香る白州バーを開催していました。コメ展と同様に楽しみにしていたのですが、いかんせん寒い。一杯だけ飲んで、残念ながら退散。2人で中華街へ移動。秘密めいた洒落たカフェで、大いに飲み 大いに語り(騒ぎ)、帰路につきました。いいお休みの一日となりました。

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明治座 五月花形歌舞伎 昼の部

おさるさまにご招待していただき、再び明治座へ。今度は昼の部を観て参りました。おさるさまありがとうございました。
幕あけは、義経千本桜 鳥居前。浅葱幕が落ちると「若い」。花形っていうより子供感がある。隼人くんは、隼人くん的に驚くほどうまくなっており、米吉くんの静御前は若いのに熟女感がありかつかわいい。種之助くんの弁慶もいい声でした。でもなんといっても若い。若いものだけだと、どうしてこう間に重みがでないのでしょう。きちんと丁寧に演じているのですが。もう5~6年すると立派な花形になると思います。この先が楽しみです。一人一人が大人の中に混じると、うーんと歌舞伎味が増すのですが。源九郎狐は、歌昇くん。キビキビと手足の動かし方がいい。一番花形に近い存在感を持っています。米吉くんの静御前から目が離せません。縛られて取り残されるところに妙にリアル感がある。ほどいてってところに。若い、若いと思わせつつ、結構 集中して魅せられました。
続いて釣女。幕があき、大名某の高麗蔵さんと、太郎冠者の染五郎さんが登場。落ち着きます。染五郎さんは、お昼時から夜の9時までずっと、主役ばかりなのですね。お疲れ様です。上臈は、壱太郎くん。壱太郎くんなら、そろそろ太郎冠者あたりができるのではないでえしょうか。なんといっても、醜女の亀鶴さんが飛ばしていました。狂言好きからみると、もうやり過ぎやり過ぎのオンパレードなのですが、憎めない。愛嬌たっぷりでした。 大名が妻を釣り上げる際に、「見目のよきを釣ろうよ。十七・八を釣ろうよ。」という問題ありげな謡の文句は、常磐津だと余り目立たないものだなぁと思う。
最後に、邯鄲枕物語(かんたんまくらものがたり)艪清の夢(ろせいのゆめ)。はじめてみる演目。洒落っ気たっぷりと書かれていましたが、設定が小学生がいいそうなことでおかしかった。それを大真面目に丁寧に世界を創っていて、大げさな遊び感が愉快な演目。もう少し整理して短くした方が面白いような気もしました。夢の中では追剥でなく追い剥がれ。人に着物もお金も押しつける強盗や、お茶屋で心付けをもらって、花魁へ取り次がれる。お願い、お金をつかわせてーという馬鹿バカしい世界。これは、あまり若さがきにならなかった。鳥追いお七の米吉くんの色っぽさと、傾城 梅ヶ枝よりも、女房おちょうの方がむちゃくちゃ色っぽくなる壱太郎くんから目が離せません。なにやら、魔性の女の要素のある2人です。 歌六さんがでてくると、いいですね。言葉のテンポがいい。鶴の池善右衛門の方のはしゃぎ方が可愛らしかった。亀鶴さんのふんどし六法もいかしていました。吉田屋の前で、きざと呼びかける藤屋伊左衛門になったり、斬られ与三のポーズを取ったり、いろんな芝居のエッセンスが詰まっていて、ニヤっとさせる。面白い演目でした。

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2014年5月 4日 (日)

明治座 五月花形歌舞伎 夜の部

明治座にて、伊達の十役をみてきました。染五郎祭。彼は端正だし、うまい。与右衛門の誠実さや、土手の道哲の軽い悪党の雰囲気もよかった。しっかりとした政岡でしたし。しかし「伊達の十役」が輝かない。細川勝元なんて、くたびれはてていたせいなのか、キリっとした名さばき感がない。普段ならもっと達者にできそうなのに。なぜ、十役を一人でするのか。しかも早替りをし宙乗りまでして。わからない。残念ながら、そこまで長時間・ほぼ一人が全ての観客を魅了させ続けることはできないのではないか。勘三郎さんならできたかな。この演目を復活したときの先代の猿之助さんにはその力があったのだと思う。でも、今はみな魅力的になってきたし、1人の力だけでなく役者どおしの呼応の妙を楽しみたい。また時代は変わるのであろうけれども。そんなことを考えた。よかったんです。よかったのだけど、観ている方もくたびれます。正岡は、じっくりとみてみたいと思った。飄々とした軽みのある、小悪党ものもいいのではないか。あれもこれもでなく、本来の演目をじっくりとみたい。 独力で魅了すというよりは、みんなの力で大円団っていうほうを、好みます。

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田中信太郎 岡﨑乾二郎 中原浩大 かたちの発語展

ひさしぶりに会う学友をむかえてランチ。5人しか集まれなかったとは思えないほどの盛り上がり。散々しゃべったあと、 BankART1929  BankART Studio NYKへ。「田中信太郎 岡﨑乾二郎 中原浩大 かたちの発語展」をみてきました。ゴールデンウィークで大賑わいのみなとみらいですが、ここはゆっかりとしていました。誘われないとなかなか行く機会がないものをみるのが面白い。全館を使っての3人のアーティストによる個展。それらは相互の関係性があるのか、かみあわないのか。深いところはよくわからなかったが、それぞれ気になる作品があった。倉庫という空間がよく似合っていた。作品の横に、作品名をいっさい表記しないのところが新鮮でした。配布された作品リストにのみ情報がある。途中、革のショルダーバックが放り出されていた。まさか、これ作品じゃないわよねと友人と3人でしゃがんでつついていたら、青年が恥ずかしそうに近づいてきて持っていきました。忘れ物でした。それが一番面白かったというのは、アーティストに失礼かもしれませんが、一番面白かった。素敵なカフェがあるので夕暮れ時から夜にかけていってみたいなぁ。といつも思うのだけど、いつも忘れちゃう。

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2014年5月 1日 (木)

十二世市川團十郎一年祭

1405_2 こんな風に團さまの写真にお花が飾られている團菊祭を観にくる日がくるなんて。実感はまだまだわきません。團菊祭にいってきました。
昼の部は、左團次さんの毛抜から。
次に、勧進帳。海老蔵さんの弁慶は、余りにも思い入れが強かった。義経を思うというよりも自分にというか、勧進帳に、弁慶に、成田屋にへの情熱が強すぎて でちょっと心配。初日は力がより入ってしまうのでしょうが。菊之助さんの富樫が、キリっと公明正大でのびやか。情に熱く、若々しく、まっすぐないい富樫。だけれども、弁慶との対話を感じない。 弁慶の方も、自分で自分にいいきかせているようで。ずいぶん昔にみた、この2人の勧進帳は、もっと対決していた。 富樫の威力で、掛け合いのバランスがもう少しよくなってくるといいのですが。この次に多いに期待しています。四天王には、亀三郎・亀寿・萬太郎・ 市蔵。頼もしかった。ただ居るいう場で、きちんと存在感のあるだだずまいがよかった。義経の芝雀さんは上品でした。出のところで、人の手にかかる位ならばと弁慶をじっとみて言うところが、主人の大きさがみえてさすがだなと思った。でも、弁慶・富樫・義経の3人に間の空気をあまり感じることができなかった。 次に観るときに期待します。 弁慶さんは、延年の舞のところがおおらかでうれしそうでよかった。 
昼の最後は、魚屋宗五郎。さすがです。菊五郎さんの宗五郎。花道をしずんで入ってくる気配や風情がいい。のむと本当に仕方の無い人になる。物のわかった男なのに。幹部に昇進した橘太郎さんの小奴三吉。軽みがあってさすがでした。沢山、働きがあるのですが、無駄な動きをしない。なんかあったらいつでも飛び出しますぜと控えている。余計なコトばっかり、言ったりやったりする愛嬌ものでした。菊茶屋女房は 萬次郎さんの娘は天才 右近くん。この2人にもっと出番を。少ない出番でしたが、さすがのうまさ。 女房おはまは時蔵さん。間違いなしです。 菊五郎さんの宗五郎さんとぴったり。おなぎちゃんの梅枝くんは、達者すぎです。うますぎ。すばらしい、 魚屋宗五郎でした。
続いて夜の部。矢の根から。まったくものすごい話です。こんなむちゃくちゃな話を力づくで収めちゃう。技のみせどころです。荒事の豪快さよりも、稚気の部分がみせどころかもしれない。後見のみどりさんもみどころです。じっと支える辰緑さんも。歌舞伎座にいる、田之助さんの姿に喜ぶ。あっけらかんとおおらかにがんばれ!
極付幡随長兵衛 公平法問諍。幡随長兵衛といえば、俳優祭の時の大河くんが印象深い。がんばれ海老蔵ちゃん。 男気を示すのに一生懸命でした。俠客道を貫く俺!別れをと俺!もう少し、仲間や女房との間の空気を膨らませてほしい。喧嘩を仲裁しにはいってくるとことは、素直にカッコよさを楽しめました。
最後に春興鏡獅子。菊之助さんの小姓弥生は、もはや女子でした。歌舞伎役者の踊る弥生は、殿に強いられて仕方なく踊る。殿の面前の緊張感とか、弥生の世界がたっぷり出ているのですが、菊之助さんの弥生は、そういう設定を越えてもう女子でした。可憐に踊ろうとかそういう体裁を越えていて、ちょっと驚きました。今日は、一日中3階の遠いところから舞台をみていたので、1階で近くでみる春興鏡獅子をどう感じるのか、とても興味がでました。
茂之助さんが荒五郎さんに、左字郎さんが蔦之助さんに名題披露をしていました。幡随長兵衛の子分として、荒五郎さんが長兵衛を思いいきり立つ。國矢さんと一緒に蔦之助さんが胡蝶を踊る。すみからすみまで応援しているので、こういう大きなチャンスに挑む姿をみて嬉しくなった。 そういう場をつくる菊五郎劇団の大きな愛情もたっぷり感じました。帰路につくおばさま達からは大きすぎる胡蝶だと評判がよろしくなかったけれども。いっぱいの拍手を贈りました。

團菊祭。ああ團菊祭。團菊祭。

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