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2014年7月20日 (日)

七月大歌舞伎 夜の部

歌舞伎座へ。七月大歌舞伎の夜の部をみてきました。
最初は、猿翁十種の内 悪太郎。元になった狂言の悪太郎は素面で登場し伯父の家で乱暴し大酒を飲むのだが、歌舞伎の悪太郎は、最初から酩酊して登場。ほぼ悪太郎と修行者智蓮坊のやりとりの妙をみせる。こういう展開を考えるとは面白い。市川右近さんの悪太郎に猿弥さんの修行者。バランスのよく達者な2人。松羽目だったのに、松だけ残し往来になってしまう。理屈じゃない展開があっぱれです。狂言は、乱暴者の悪太郎が変わり果てた自分の姿に心から前非を悔いしょんぼりする様が可愛らしいが、歌舞伎はどこまでも明るく身勝手。それを愛嬌とみせるところが腕のみせどころだなぁと思う。伯父の松之丞に亀鶴さん。 太郎冠者に弘太郎さんととにかく踊れる人ばかりでキレがあった。
続いて、修禅寺物語。岡本綺堂による新歌舞伎のこれは、なかなか自分の中に浸透してこない。春猿さんと笑三郎さんなら、わがままな姉はきっと春猿さんであろうと思いこんでいました。笑三郎さんもなかなかのきかん気。このお2人はどちらも巧みにできるのですね。月乃助さんの頼家も本当に性急そうで、不幸になりそうだった。娘が目の前で命を落としてしまうというその時にも、その死相を、苦しむ女の顔を面に彫りたいと筆を取る夜叉王。中車さんの夜叉王のリアルさに、非情モードが更に増加し、ぐったりしました。丹念に非情。
最後は、天守物語。玉さま以外の天守というのは不可能なのではないだろうか。海老蔵さんの姫川図書之助といい、鏡花の世界にはそれを説得させる位を感じさせる人でないと創り上げることはできない。この2人にはできる。いつまでみることができるのであろうか。今回の観劇を大切に観た。
富姫の凛とした姿。異形のもの残忍さ、強さともろさが完璧でした。見慣れてきたのかもうこれは歌舞伎だということに違和感がなくなった。幕見をした時に驚いたが右近ちゃんの亀姫がすばらしい。妹分であり、かつ富姫と同等にわたりあっていた。気高く、残酷さを感じさせる。
花道のそばで鑑賞。よい香りがすると思ったら図書之助が天主への階段をあがってきた。暗い中、香を炊いた装束の香りがして登場を知る。現代でない別世界に、心がワクワクして飛んでいく。農民のものは大切にし、武士の狼藉ぶりを嫌悪する。戦いで見事散った者の兜は美しく、陣の後ろでただ控えているだけの兜に価値を見出さない。言葉や精神の美しさを大切にした鏡花の世界にどっぷりとひたって鑑賞する。劇場に足を運び、その場で体感しなくてはこう隅々まで感じることはできない。その場かぎりの道楽ではあるが、贅沢なものである。富姫は、姫路城の天守でその姿をみることができたなら、こんなに尊く美しいものはないのであろう。天主でないところでは在らざるものもので獅子のように、万人の目に美しいと映るのものではないのかも知れないと思った。
創った世界だからこその完璧な美。海老蔵さんの図書之助は瑞々しく正しい生き方をしてきた勇気ある若者であった。強く気高い富姫が「帰したくなくなった」いう。そのもろさがきれいだった。鏡花の世界を満喫した。

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コメント

素敵ですよね、玉様の富姫(*^o^*)
鏡花作品が大好きなので、歌舞伎以外でも何度か拝見してますが、玉様&海老蔵丈コンビでの鏡花が絶品です。
前に見たし連続遠征は(>_<)と思って控えましたが……

詳細レポートで拝見した心地になりました。ありがとうございます(^O^)

投稿: 堀河初音 | 2014年8月 9日 (土) 19時24分

こんにちは。また、コメントをいただけてとてもとてもうれしいです。ありがとうございます。
(それなのに、しばらくここから離れてしまい返信が遅れてしまいました。ごめんなさい。)
鏡花が、歌舞伎座にしっくりとけこんでいました。時代がかった世界に美しい言葉がぴったりです。少し残酷味があるところがよりよいのかもしれませんね。

投稿: マイチィ | 2014年8月28日 (木) 23時50分

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