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2014年7月 8日 (火)

『てのひらの闇』

藤原伊織『てのひらの闇』(文春文庫)を読んだ。
主人公の男は輝かしい道を歩いているわけではない。でも絶対に人を惹きつける男である。強引で、上にこびず、かといってわがままではない。強いのだけど陰があり、仕事もできる。読んでいてどんなに幸せを願っても、自分からすっとその幸せに背を向けてしまう。なるほど、これがハードボイルドかという作品。
主人公 堀江は、会社でリストラに直面している46才。彼は、淡々とそれを受け入れる。私は、うらまずにはいらない。そんな選択を押しつけた側は、自分は安泰でも 親の因果が子に報いできっと子孫に報いがいくわと思ってしまうような人間だ。 有能な彼は、最後まで自分の仕事をする。自分のスタイルをつらぬく。飲料会社宣伝部課長という役職でありながら、会長から直々に仕事の打診がくる。そこに真摯に向き合い、なにかねじ曲げられ隠されていることに気づく。その指摘を受けた会長が、それを素直に受け入れ感謝し、その夜自殺する。
堀江の出自が極道であったこと、企業に吸着する極道と政治家、過去の女、みごとなハードボイルドの世界。堀江の周りには、魅力的なというか個性的な女や男が現れ、手を貸すような関係を築く。やっかいことだから、言わずにいてもちゃんと気が付き手を差し伸べる。満身創痍で敵に立ち向かい、ボロボロになり、ほろ苦い結末を迎える。やっぱいいいなぁ、藤原伊織。
自身は東京大学卒業。大手広告代理店に勤務の経験があったそうだ。解説の そこを強調して紹介する言い方がなぁ。ハードボイルドじゃない。解説者逢坂剛御自身も大手広告代理店に勤務と言及。電通や博報堂勤務を否定するつもりでない。仲間意識を伝えたいのでしょうが、こういういい世界を読んだ余韻を楽しんでいるときに、野暮な気がした。

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