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2014年7月21日 (月)

『三月は深き紅の淵を』

桜庭一樹の読書日記を読んだら無性に読みたくなった。恩田 陸『三月は深き紅の淵を』 (講談社文庫)を再読。恩田陸ではこれが一番好き。最初に読んだので印象がとても強いせいだと思う。
一冊の不思議な本『三月は深き紅の淵を』を巡る4部構成の物語。それぞれが別のようで、からみあうところもある。複雑で、全てがあきらかにならず余韻がある。本の中の本に魅せられる。本の中の本に物語がある。どこまでもぐっても、まだ先に何かがある不思議な感じ。本が好きな人がいっぱいでてきて、その本を愛好する様に飽きれつつも憧れる。自分も沢山読むのに。第一章・待っている人 では、そんな若手社員の彼が出てくる。会長の別荘へ2泊3日の招待を受ける。たった一人だけ。しぶしぶ屋敷に向かい謎の本に序所に魅了されていく。もどってこれなくなりそうな怖さを含んでいる世界がいい。
第二章・出雲夜想曲 では、女性編集者2人が夜行列車で出雲へ向かう。ただ本が好きなだけではない、本そつくることに携わる編集者。夜行列車という閉ざされた不思議な空間で酒盛りをしながら本の話をする。伝説の謎の本の話になり、ついには行く先の出雲にて作者と推定される人を訪ねる旅となる。目的があるのにどこか心もとなく堂々巡りになりそうな不思議な世界があった。
第三章・虹と雲と鳥と では、冒頭に女子高生が2人転落死する。この高校生の世界は怖く残酷で美しかった。運命にはあらがってもしょうがないというあきらめと、散ってしまうことになってもあらがう若さの美しさの危険な感じ。この人の描く高校生の世界はすごいと思う。大人になったら、高校時代は通過点ということがわかるがあの頃はわからなかった。今が世界の全てで、他の世界を認めず、好転することを信じず、絶望を愛するところがあった。大人になってしまった今、その空気感がよくだせるなと。真相を追い、事実がわかってもなお物哀しくてよかった。
第四章・回転木馬 では、人々も物語も飛びまわる.とりとめがないようだがリンクする。それぞれの人生の空間を映しだす映像を順にみているような。切り替わって余韻を引きづりつつ巻き込まれている。わからさなが不快ではない。ひとつづつのエピソードがそれぞれ小説になりそうな 読んでみたいと想わせる贅沢な話。この本は、恩田陸の初期のもの。ここにちりばめられたモチーフが、どの作品にどうのように影響を及ぼすのか。読み返し、まだまだ未読の恩田陸の作品を読むのが楽しみになった。
幻の本『三月は深き紅の淵を』。それを探す話。実際にこの本は存在するのか、誰の手によるものなのか。魅惑的な本について、時間もお金も人生もかけて考える。実に魅力的である。
解説は、皆川博子さん。うまい。物書きってすごい。(すごい物書きによる表現がすごいのだけれど。)うまいなぁ。 物語がすばらしく、解説までがすごい。最高。

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