八月納涼歌舞伎 第一部
ワクワクと納涼歌舞伎へ。第一部と第二部を通して鑑賞します。まずは、一人で第一部。3階の一番後ろから鑑賞。
「恐怖時代」と「龍虎」。龍虎は、獅童さんと巳之助くんが必死にがんばっていました。
谷崎潤一郎の「恐怖時代」。どんなものかしらと興味津々でした。悪人ばかり出てくる異色作で、大正5年の発表当時、悪魔主義といわれて発禁になったそうです。ものすごいすざましいお話で、ギョっとしながら観る。ギョっとするけれどやめられない。扇雀さんが魔性の女お銀の方。春藤家の殿の橋之助さんは残忍。お銀の方は、その殿の妾でありながら、家老の彌十郎さんといい仲。亀蔵さん演じる医者の玄沢先生をその気にさせては毒殺し、正室に毒をもらせ、最終的には自分の腰元 萬次郎さんといい仲になっているお小姓の伊織之介 七之助さんといい仲なのであった。若くきれいな人がいいのね、結局。
芝のぶちゃんの娘お由良もよかった。勘九郎ちゃんとの親子関係も巧みに、そうみせていた。橋之助さんの殿の残忍ぶりもすごかった。お家のために意見するものを手にかけ、苦しむ様をみながら一献飲む。高笑いが怖い。 萬次郎さんの腰元のしたたかさと自ら手に掛けることをなんとも思わない冷酷さが巧みでした。そんな立派な腰元も、若く美しいお小姓 七之助さんの前ではデレデレ。七之助さんの甘えっぷりが、上手い。しゃべり方を女っぽく、いかにも前髪のたよりなさがかわいい。でも腕は立つ。なるほど、結局こういう人が最後に全てをつかめるのかもと思わせる説得力のある立ち姿だった。さすが。
気弱な茶坊主 珍斉の勘九郎ちゃんがすごくよかった。弱気なのに結局渦中に巻き込まれていく。どうにもならない関係にがんじがらめになる。身体中で声にならない悲鳴をあげて翻弄される様子が軽やかでうまい。勘三郎さんみたいだなぁとついつい思ってみてしまう。
美しい女であれば、不貞を重ね、自分が欲しいものは殺して手に入れたらいい。どこか曲っているが耽美的。残酷で残忍で大袈裟。お家横領を狙うもの、命がけでお家を守るため働こうとするもの、愛の欲深さと権力への欲深さ。すざましい話なのだけれど、おおらかに進む。面白い。
これを面白いというと、人間として間違っていると思われてしまいそうで言い難い。でも夢中になった。谷崎歌舞伎を満喫。
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コメント
8月もあちらこちらに足を運んで色々たくさん見てらしたのですね。素敵です。
芝のぶ丈は7月に久し振りに拝見し、テンションが上がりました。もっといいお役が付く事を祈ってます。
8月の歌舞伎座、間違いなく面白くて楽しいだろうと予想はしてましたが、やはり見応えがあったようですね。行けなくて残念です。
歌舞伎は襲名披露以外の旅公演がないから、歌舞伎座での演目は東京でしか見られないのが悲しいです。
9月10月の歌舞伎座も、見たいあまりに歯軋りしそうな番組
母が来週観劇に遠征しますが、感想は当てにならないので、このブログを楽しみに待ってますね!
投稿: 堀河初音 | 2014年8月31日 (日) 21時01分
芝のぶちゃんが娘で、勘九郎ちゃんが父親。父が「むすめ」と呼びかけるのが面白かったです。芝のぶちゃんが勇気ある腰元で、あんなに献身的に悪に立ち向かうのに、惨殺されていました(音だけでした)。とてもおきれいでした。花道から本舞台まで、おびえる父をなだめすかして連れて行く場面がしっかりみせていました。お2人で、しっかりとひきつけていたので、さすがだなぁと思いました。
これからもコツコツと歌舞伎観劇し続けます。よろしくお願いします。
投稿: マイチィ | 2014年9月 2日 (火) 00時06分