十月大歌舞伎 昼
やあやあやあ台風がやってきた。というのにおさると歌舞伎座へ。今月は勘三郎追善なので、昼も夜も奮発。最前列で堪能してきました。そしてどんなに勘三郎さんのことが好きだったか考えました。むちゃくちゃ中村屋兄弟を応援しています。
野崎村から。昨年福助さんのお光の時に、七くんのお染ちゃんの達者さに驚きました。梅の木の横で背中をみせている様子の美しかったこと。今回は、お光ちゃん。久松が大好きで、ウキウキしながらなますを作っているところの可愛いここといったら。大根を一切れ切る度毎に、照れたり喜んだ値ぽーっとしたり。可愛い&うまい。お染ちゃんは児太郎くん。ずいぶんよくなってきているように思います。がんばれ。お染ちゃんが現れてからのお光っちゃんのやきもちのやき具合もかわいい。芝翫ちゃんも可愛らしかったなぁ。どうなるかわかっているので、おかしくって物悲しい。
久作は、彌十郎さん。富十郎さんのように普通にしゃべっているのに歌舞伎になる方です、この方も。 久作妻おさよが出る型は珍しいように思った。母は、わずらい弱った身体。目もみえないようだが、娘に祝言の装いを聞きうれしそうにするので、もうたまらなく悲しい。髪の様子を尋ねたり、裾模様のあの着物にしたのか質問に思い描く母のそばで、尼の姿になってしまったいるお光は、涙をこらえ微笑み応える。けなげさに涙が出る。母は歌女之丞さん。とてもよかった。
油屋からお染の母が迎えに来る。後家お常は秀太郎さん。こういう方が出ると、舞台にぐっと趣きが増す。駕籠と船に別れて油屋へ帰っていく2人を見送るお光っちゃんと父久作。視線を交わし、互いに呼びあうだけでもう言葉にならない。「嬉しかったはたった半時」がこんなにもしんみるするとは。とてもよい野崎村でした。七くん、すごい。
休憩をはさみ、今度は踊りが2番。さっき、久松でやきもきさせた扇雀さんの、近江のお兼。確かに、高下駄で縄を踏んだだけで暴れ馬を抑えちゃう力持ちの娘さんでした。かわいらしくもありました。
続いて、三社祭。悪玉と善玉の踊りは大好き。新開場の歌舞伎座で、 勘三郎さんと三津五郎さんの三社祭をみることを夢みていました。夢でいいからみたい。悪玉は橋之助さん。息のあう人と踊っているのをみてみたい。いいだろうなぁ。獅童さん、愛嬌はあるけどもっとがんまれ。
昼の最後は、伊勢音頭恋寝刃。いつも「ねばた」か、「ねたば」がわからなくなる。正解は「ねたば」。仲居千野で小山三ちゃん登場。相変わらず、開場中の人気をさらう。幕見したときも、しっかりと声が届いていました。桂三さんよりも。お岸に児太郎くん。がんばっています。梅玉さんの万次郎は、いいボンボンぶり。貢の勘九郎ちゃん登場。すっとしていい男です。最初はちゃんとやわらかみのある若者。忠義心があり、まっすぐだけど、若いからカーット頭に血がのぼりやすい。激昂していく迫力がありました。手のひらの上で操るように意地の悪い万野は玉三郎さん。えっ!玉さまがと驚きましたが、楽しそうにたっぷりと意地悪を披露していました。ありゃ太刀打ちできっこありません。独特の万野で面白かった。 いい塩梅のお鹿ちゃんでした。 お紺は七くん。美しい。出てきて、膝でそっと貢さんの背を押すしぐさにしびれます。自分がどう思われようとかまわずに貢のために尽くす。肝心の貢はちっともわからず怒りまくる。 それでも毅然としているお紺は美しかった。七くんの貫録のある美しさったらありません。すばらしい。 料理人喜助は、仁左衛門さん。流石!かっこいいところをさっと持っていきます。フっと見せる表情もいい。止まってちょっと振り返りクスっと笑って去るとか、身体中でかっこいいを表現できちゃう。
当の貢は、取り違えに気が付かずうっかり万野を手にかけてしまう。ふらっと現れたお鹿も手にかける。そこから奥庭へ。殺戮なのに様式美になる。関係ない人を殺しまわっているのに、そこにみどころがいっぱい。ザ歌舞伎です。 駆けつけたお紺さんに正気にならせてもらい、刀の折り紙をもらい、またまた駆けつけた喜助さんに、刀は本物だと教えてもらう。2品揃ったからは しぇーありがたい。 ありがたいじゃないよ、どうするのこの死体の山。調子がよすぎてちょっと面白いほど。歌舞伎ってすごい。結局は万次郎さまの為なのよね。自分の為にしていないってところもポイントかもしれない。
昼の部も夜の部も、みごたえがありいい大歌舞伎でした。ありがとうございました。
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
最近のコメント