2015年1月18日 (日)

新春浅草歌舞伎

浅草へ繰り出し、新春浅草歌舞伎を昼夜鑑賞。ものすごく若返ったので、そこそこぐらうであろうなと思っていたら(失礼)、新鮮で かつ結構よかった。驚いた。まだまだ伸びていかなくては困っちゃうけど、伸びしろがあることを感じるし、一番いいのは今伝えようとしていることがきちんとできていたということ。変なクセがなく素直。演目をちゃんと味わえました。
絶品だったのは、種之助くんの猩々。すばらしい。人でない存在でした。気品もある。足運びがなめらかで美しく、重心がぶれない。木目込み人形のようにちょこんとした可愛らしさもある。酒を飲み、笑う加減までいい。人の機嫌のよさとは違う感覚のそれは素晴らしかった。手足の隅々まで美しく動くが、あどけない。魅入りました。何よりもあの足さばきがすばらしかった。
あと、一番の難関と思われた松也くんの早野勘平にも驚いた。なんだか現代的になっちゃっているのですが、勘平の持つ若さとか思い込みとかがとても素直に伝わってきた。飽きさせなかったのが何よりすごいと思う。勘平は、するべき手順が沢山あって、それを一つづつこなしている過程がよくわかる。丁寧に丁寧に勘平を演じる。俺の勘平をみせるということでなく、おかるを想い おかるの親に詫びてもすまない事だけど絶望し、同邦には分かって欲しいと必死にすがる。 みていて、うまいなぁとうなるような勘平でもないし、勘平の肝をみせるのでもないけれど、あの勘平はみていて飽きなかった。 一瞬も気をぬかず、強烈に生きている様は、ベテランにないすごみで新鮮だった。
第一部のお年玉年始ご挨拶は、巳之助くんと種之助くん。トークの腕のある巳之助くんと、おっとりとしてトーク上手の相方にも動じない種之助くんの組み合わせが気に入りました。演目の紹介が説明にならず、意外と(失礼)うまかった。春調娘七種で 七草を恵方を向き刻む振りがあるとか、特に舞踏をみるときに、より興味をもつことができました。独楽売が歌舞伎本公演でかかるのは60年ぶりで、坂東流の踊りなので大切にしていることも伝わりました。
第二部のお年玉年始ご挨拶は、隼人くんと児太郎くん。ガッチガッチで、まったく余裕のないまま終了。達者な子が入っていない組み合わせも、浅草らしくってなんだかいい。今に器用にお話するようになっちゃうのでしょうからね。それに若い御仁が見ても、お役を務めさせていただくとか 普段耳なれない言葉使いが新鮮でしょうし。
最初は、「春調娘七種」。そういえば昔浅草でみた松也くんの壽蘇我対面の五郎はものすごかったなぁ。今回は、隼人くんの十郎が品があり優雅でした。児太郎くんの静御前は、所作がきれい。解説のおかげで内容を考えてみることができ、華やかでした。
次に「一條大蔵譚」奥殿だけだと、つくり阿呆が しっかりとした正体をあらわした所からになっちゃうなぁ。米吉くんの常盤御前は、おっとりしていて、デンと構えていて姫でした。かわいかった。何やら気を惹く人です。鬼次郎、お京夫妻には松也くんと児太郎くん。松也くんは、五郎より似合っていました。児太郎くんは盤石。歌昇くんが一條大蔵長成。若いんだけど、大人感がある不思議な兄弟。若いのに、古臭い感が(じゃんくて古風さが)うまい。阿呆顔は、立派な阿呆にみえました。きちんと歌舞伎でした。
最後に「独楽売」。米吉くん芸者が、かわいい。茶屋女房の芝のぶさんは綺麗。雛妓の鶴松くんと梅丸くんと、新春らしい華やかさ。そこに 独楽売登場。巳之助くんと種之助くん。清らかな雰囲気があり、明るい送り出しになるいい演目でした。
浅草の街をひやかし、おせんべや足袋などを買っているうちに第二部になりました。
「仮名手本忠臣蔵 五・六段目」花形歌舞伎でかかると、実際にはこのくらいの青年達の話なのだなぁと思っていましたが、もっと若いこの浅草世代なのか・・・と思う。芝喜松さんの母おかやがよかった。芝居にはこういう人が必要です。歌女之丞さんの一文字屋お才という2人の組み合わせで、場が落ち着いてみやすくなる。蝶十郎さんの源六も相性がよかった。 おかるは、児太郎くん。おさえた演技はよく似合っていました。やるなぁ。
最後に、「猩々 ・ 俄獅子」 猩々にほれぼれ。種之助くんに俄然注目となりました。酒売りの隼人くんも品がありました。前よりうまくなったなぁ。 最後に華やかな俄獅子。やっぱり米吉くんの芸者がかわいい。華やかで明るくて、こちらもいい送り出しになりました。
案外楽しかったです。やるなぁ、若者。

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2015年1月13日 (火)

南総里見八犬伝と新年会

相棒のおさると、今年初遊び。早くも新春休暇を取得し、国立劇場へ。通し狂言南総里見八犬伝をみてきました。3階の上の方からでしたが、ちょうど花道のラインの席でしたので、花道を使う時にはよい眺めでした。
通し狂言なので、丁寧であるだろうし、里見八犬伝は派手でいいだろうなと思っていました。説明がちで、乗りがでていないように感じた。ちょっとテンポがでてきたと思うと幕になり、トントントンというのを待っているうちにトーンダウンしてしまう五幕九場でした。唐突さと細かな心理描写を混ぜ込むパワーが歌舞伎にはあると思うのだけれでも、その効果が発揮できていないようで、もったいない気持ちになりました。
毎年、最後の方にならないと登場しないなぁと思っていた亀三郎、亀寿 御兄弟が全般で活躍。声もいいし見栄えもする。前髪ものの菊之助さんは花柄の装束がよく似合う。ザ若武者。梅枝くんは達者に不憫に演じ、ちょこっとしか登場しない萬太郎くんは指先までりりしい。天才右近ちゃんは、しっとり堂々としているし、ちびっこ左近くんはりりしく愛くるしい。松緑さんはすっきりとしてから、シャープさがました。個々の光が、長々とした説明の渦にまきこまれ薄れていくようでした。筋の展開のわかりやすさは、そんなに求めなくてもよいのではないだろうかと考えた。
菊五郎さんや左團次さん、時蔵さんが登場すると厚い歌舞伎感がでるのだけどなぁ。それも説明がつづき 何の話なんだかわからなくなってしまいました。
二幕の 芳流閣の場。屋根の上の大立ち回りは素晴らしかった。あの場で心が晴れやかになりしました。舞台を廻し、屋根から屋根へ渡りながらの立ち廻りは、新しさもあり、古風さも失わず、見ごたえがありました。
終演後、新年会。ここ数年ずっと気になっていた海老蔵さんが結婚したプリンスホテルの上の方のレストランでの宴。平日、5時開始というおじいさんぽい時間設定であったからか、目の前に東京タワーがそびえたつ素敵な席でした。女子2人には、無駄にムーディーだとおさるに愚痴られる。いいじゃん。 お酒片手に 里見八犬伝についてとか(要は千葉の犬の話じゃんてことにならないためには・・・)、オリーブ少女時代についてなど ムーディーな席で語り合う。楽しく美味しい宴でした。

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2015年1月12日 (月)

梅若研能会

今年の初能楽堂鑑賞。観世能楽堂へ。梅若研能会の公演をみてきました。1月に能楽堂で翁を鑑賞。背筋がピンと伸びる気がします。新春を言祝ぎ、天下泰平を祈る。とかかれていました。ことほぎって中々使えません。 翁は梅若万三郎さん。翁というと重々しい一声というイメージがありましたが、きれいな声で清らかさを感じました。お孫さんの志長くんが千載。現代の子はヒョロっと背が高く腰の位置も高い。席から姿はみえませんでしたが、地謡がはじまると底から響くような落ち着いたいい声が聞こえてきました。能楽堂って素晴らしい。観世能楽堂は、松濤の地から銀座へ移転するそうです。このいい響きも持っていくことができるのかしらと思う。 三番叟は萬斎師。キレよく張りがある。お稽古の相方と並んで鑑賞。勢いがありきちんとコントロールされているねと言われ、なるほどと思う。強いエネルギーがあるが、飛び出してしまうようには感じられない。儀式性が高いところが、特に好き。美しかった。 休憩をはさみ文蔵。この曲は私みたことがあったかなぁ。万作師の語りがたっぷりあって素敵な曲でした。深田師の太郎冠者のとぼけた味わいもよかった。主に無断で都見物にでかけ叱られる。その時にご馳走なったものが思い出せない。主がよく語る中にあった名前のものだったのですが・・・という太郎冠者に、本格的に語りだす主もいい。万作師の語りはどんどん興が乗ってきて活き活きとし面白かった。ひきこまれて聞いていると「あっ それです!」と。その文蔵ですというが、それは文蔵(ぶんぞう)でなく温粕(うんぞう)という粥という結末。あっけないところがいい。 語りを夢中になり聞いていたが、きちんと聞きとれてなくて、新しい物語になってしまいました。合戦中、とらえてt首をかき斬ろうとしたが斬れない。みると鞘に入ったままだったので咥えてはずそうとしたら柄から鞘ごと折れて海に流れていった。そこへ薄をかき分け現れた兵が・・・ どんなシチュエーションなのでしょう。わからないのにこんなに面白いなんて。きちんと理解したらさぞ面白いことでしょう。堪能しました。

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2015年1月 2日 (金)

初芝居

Getattachment 今年の初芝居鑑賞。
歌舞伎座にしました。昼夜通し。3階だけど着物ではりきって観て来ました。
歌舞伎座は満員御礼。お着物率も高かったです。客席も張り切りモードで、みんな幸せそう。あちこちに華やかな飾りも多く、とにかく華やかな空間でした。1階のホールには大きな鏡餅。橙がいっぱいのっていました。お餅がひび割れているので本物ねと友とよーくながめる。立派なイセエビもついていました。もしかしてあれも本物?2人でクンクンと嗅いでみると生臭い・・・若布の匂いかしら。とにかく浮かれた一日でした。
亀ちゃん(もう猿之助さんだけど)が、やっと歌舞伎座に!!きねんすべき初日にみてきました。すごかった。薄の原っぱから滑るようにおりてくる。エスカレーター?と思うほど。もちろんそうでなく、完璧な足使いのなせる業ですが。すごかった。芝居の感想は、またおいおいと。


追記;
壽初春大歌舞伎。初日に歌舞伎座へ。昼夜鑑賞。

とにかく素晴らしかったのが、黒塚。気合いがよい方向に向き、強く美しかった。人を引きつけるものがあった。歌舞伎を観たという満足感が一番高い演目でした。
奥州安達原。阿闍梨祐慶一行が老女の家に一夜の宿を請う。猿之助襲名のときには團さまだったなぁと、やはり思い出してしまう。芒の生い茂る原の、小さな小さな小屋に一人でいる老女。自らの身の上を語る。だが、さみしそうでも哀れでもない。猿之助は、岩手としてそこにいるのがうまいのだと思う。岩手は一行のために、薪を取りに出かける。人のために何かをすることの嬉しさがそこにあった。芒の原をすべるように進む足使いにもみせられた。踊りのうまいこと。この先、約束したのに庵の中をみてしまったと鬼女に豹変してしまう怒りとさみしさの場になる前の、ひとときの幸せ。ここをみるために、もう一度幕見しようかと思った。
昼の部は、「金閣寺」から。七くんの雪姫。大膳の染五郎さんは、出だし余り声に張りを感じなかった。なんだか悪そうでしたが。どっしりしているのですが、 此下東吉の勘九郎ちゃんは鋭い感じで、対決にちょっと温度差を感じました。エンジンがかかる前のような。七くんの雪姫は、なよなよして、物事を自分の力で切り開いていけなさそうな姫らしい姫でした。大膳には従えないし、大切な直信は処刑されちいそうだし、ただ泣くだけ。代わり金閣の天井に龍なんて描けたのかしら。白鼠の力というか祖父 雪舟の力を得て、急に事態が急展開。全てうまい方に自らの力で成し遂げる展開がぴったりでした。この理屈じゃない感じが鷹揚でよかった。
続いて、「蜘蛛の拍子舞」。白拍子妻菊の玉三郎さんは文句なく魅惑的。実は葛城山の女郎蜘蛛の精だった・・・玉三郎さんの顔に隈取なんてと観るたびに思う。景気よく蜘蛛の糸が舞う。後見がものすごい集中力で巻き取る。美しく巻いては、スピーディーに巻き取る。派手でいろいろ楽しい演目でした。
昼の最後は、「一本刀土俵入」。旅籠の安孫子屋前に現れた腹ペコで一文無しの茂兵衛は、 幸四郎さん。頭の弱い子にみえちゃった。お蔦が魁春さんで新鮮でした。十年の歳月が経ち、連れ合いが博打でいかさまをしたため家で娘と怯える方のお蔦はけなげでよく似合っていました。いかさまをした辰三郎は錦之助さん。どこかのんきなところがよく似合う。波一里儀十たちに追われるところを、助けるやくざものになってからの茂兵衛の幸四郎さんは大きな声を出していて驚いた。
続いて夜の部。「番町皿屋敷」吉右衛門さんが青山播磨。その男の誠が分からず、あさはかなことをしてしまった腰元のお菊ちゃんに、芝雀さん。 芝雀さん。ぴったりでした。まったく若い娘さんは、仕方のないほどくよくよし、余計なことをする。播磨の心に喜び、そして怒りに素直に自分を責め、手を合わせる。短絡さがとても似合っていました。
大事な者を無くしたから、もう俺の人生 この後は喧嘩だ!というのは、人としてどうなの青山播磨?とまじめなことを考えてしまいました。一生懸命みちゃったみたいです。
続いて「女暫」。華やか。でも、番町皿屋敷の時もちょっと思いましたが、ベテランの方の活絶が少々心配でした。そこは味で補えちゃうのですが。玉三郎さんのしーばーらーくーがちょっとこもって聞こえました。姿が見えれば優美なのですが。
最後は、「猿翁十種の内 黒塚」。やっと亀ちゃん(もう猿之助だけど)が歌舞伎座の舞台の上に立つ姿をみることができました。まってました~。おもだかやという大向こうがいっぱい。最後には、もうわかったよと思うくらいかかっていました。
壽初春大歌舞伎を堪能。こいつは春から縁起がいいわえ。

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2014年10月13日 (月)

十月大歌舞伎 昼

やあやあやあ台風がやってきた。というのにおさると歌舞伎座へ。今月は勘三郎追善なので、昼も夜も奮発。最前列で堪能してきました。そしてどんなに勘三郎さんのことが好きだったか考えました。むちゃくちゃ中村屋兄弟を応援しています。
野崎村から。昨年福助さんのお光の時に、七くんのお染ちゃんの達者さに驚きました。梅の木の横で背中をみせている様子の美しかったこと。今回は、お光ちゃん。久松が大好きで、ウキウキしながらなますを作っているところの可愛いここといったら。大根を一切れ切る度毎に、照れたり喜んだ値ぽーっとしたり。可愛い&うまい。お染ちゃんは児太郎くん。ずいぶんよくなってきているように思います。がんばれ。お染ちゃんが現れてからのお光っちゃんのやきもちのやき具合もかわいい。芝翫ちゃんも可愛らしかったなぁ。どうなるかわかっているので、おかしくって物悲しい。
久作は、彌十郎さん。富十郎さんのように普通にしゃべっているのに歌舞伎になる方です、この方も。 久作妻おさよが出る型は珍しいように思った。母は、わずらい弱った身体。目もみえないようだが、娘に祝言の装いを聞きうれしそうにするので、もうたまらなく悲しい。髪の様子を尋ねたり、裾模様のあの着物にしたのか質問に思い描く母のそばで、尼の姿になってしまったいるお光は、涙をこらえ微笑み応える。けなげさに涙が出る。母は歌女之丞さん。とてもよかった。
油屋からお染の母が迎えに来る。後家お常は秀太郎さん。こういう方が出ると、舞台にぐっと趣きが増す。駕籠と船に別れて油屋へ帰っていく2人を見送るお光っちゃんと父久作。視線を交わし、互いに呼びあうだけでもう言葉にならない。「嬉しかったはたった半時」がこんなにもしんみるするとは。とてもよい野崎村でした。七くん、すごい。
休憩をはさみ、今度は踊りが2番。さっき、久松でやきもきさせた扇雀さんの、近江のお兼。確かに、高下駄で縄を踏んだだけで暴れ馬を抑えちゃう力持ちの娘さんでした。かわいらしくもありました。
続いて、三社祭。悪玉と善玉の踊りは大好き。新開場の歌舞伎座で、 勘三郎さんと三津五郎さんの三社祭をみることを夢みていました。夢でいいからみたい。悪玉は橋之助さん。息のあう人と踊っているのをみてみたい。いいだろうなぁ。獅童さん、愛嬌はあるけどもっとがんまれ。
昼の最後は、伊勢音頭恋寝刃。いつも「ねばた」か、「ねたば」がわからなくなる。正解は「ねたば」。仲居千野で小山三ちゃん登場。相変わらず、開場中の人気をさらう。幕見したときも、しっかりと声が届いていました。桂三さんよりも。お岸に児太郎くん。がんばっています。梅玉さんの万次郎は、いいボンボンぶり。貢の勘九郎ちゃん登場。すっとしていい男です。最初はちゃんとやわらかみのある若者。忠義心があり、まっすぐだけど、若いからカーット頭に血がのぼりやすい。激昂していく迫力がありました。手のひらの上で操るように意地の悪い万野は玉三郎さん。えっ!玉さまがと驚きましたが、楽しそうにたっぷりと意地悪を披露していました。ありゃ太刀打ちできっこありません。独特の万野で面白かった。 いい塩梅のお鹿ちゃんでした。 お紺は七くん。美しい。出てきて、膝でそっと貢さんの背を押すしぐさにしびれます。自分がどう思われようとかまわずに貢のために尽くす。肝心の貢はちっともわからず怒りまくる。 それでも毅然としているお紺は美しかった。七くんの貫録のある美しさったらありません。すばらしい。 料理人喜助は、仁左衛門さん。流石!かっこいいところをさっと持っていきます。フっと見せる表情もいい。止まってちょっと振り返りクスっと笑って去るとか、身体中でかっこいいを表現できちゃう。
当の貢は、取り違えに気が付かずうっかり万野を手にかけてしまう。ふらっと現れたお鹿も手にかける。そこから奥庭へ。殺戮なのに様式美になる。関係ない人を殺しまわっているのに、そこにみどころがいっぱい。ザ歌舞伎です。 駆けつけたお紺さんに正気にならせてもらい、刀の折り紙をもらい、またまた駆けつけた喜助さんに、刀は本物だと教えてもらう。2品揃ったからは しぇーありがたい。 ありがたいじゃないよ、どうするのこの死体の山。調子がよすぎてちょっと面白いほど。歌舞伎ってすごい。結局は万次郎さまの為なのよね。自分の為にしていないってところもポイントかもしれない。
昼の部も夜の部も、みごたえがありいい大歌舞伎でした。ありがとうございました。

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2014年10月11日 (土)

猿之助奮闘連続公演 十月花形歌舞伎 昼

市川猿之助奮闘連続公演と銘打った2ヶ月公演のうち、新橋演舞場での十月花形歌舞伎 昼の部をみてきました。
まずは、市川右近さんの俊寛から。なんどみても俊寛が気の毒過ぎて、みたあと必ずくたびれる。寺子屋だって悲しいのに、何がちがうのでしょう。この後、俊寛僧都あの島でどうするのでしょう。瀬尾は、猿弥さん。横暴で ねちっこく ザ悪役でした。
その後は、三代猿之助四十八撰の内金幣猿島郡。きんのざいさるしまだいり。猿之助さんが娘 清姫と、右衛門尉藤原忠文の2役。それと双面道成寺での花子と狂言師。 夜の部とは役の数も全然違いますが、猿之助さんは何役も演じることの意味がちゃんとある役者だと思った。
いつもは、そんなに独り占めしなくても・・・と思ってしまう気持ちの方が大きかった。早変わりショーになってきて、せっかくので個々の役が荒くなってしまうように映るので。ひとつづつしっかり演じている時の方がいいのもったいないと。
金幣猿島郡は、四世鶴屋南北の絶筆となった作品だそうです。宇治にかくまわれている将門の妹の七綾姫。将門は謀反の末討たれたが、乳人御厨の歌六さんや将門腰元桜木の春猿さんらの主人への忠誠の強さは変わらない。ここの描き方がしっかりしているので、後の展開がよく効いてくる。歌六さんがいることで威力がです。ベテラン力ってすごい。米吉くんの将門妹 七綾姫は、大事にされてきているおっとり感が姫らしい。許婚である愛しい安珍は門之助さん。この人もこういう高貴なおっとりした役がよく似合う。 最初の亀ちゃん(猿之助さん)は、盲目になってしまった清姫。乳人御厨の娘で、乳人御厨はいざとなったら娘を七綾姫の身替りとして命を差し出す覚悟。恋がれすぎて盲目となってしまった清姫もその事実を受け入れ、覚悟して暮らす。いざ追い詰められ、身替りになろうとしたその時、命を奪うはずの刀が宝剣で、その上その刀の威徳によって目が開き、そのまたその上、目の前にいた安珍こそが、かねてより恋慕うその人であった。怒涛の展開。忠誠の強さをしっかり描いたあとのこの急展開の面白いこと。身替りなんて冗談じゃないわ! 亀ちゃんの清姫はぐいぐい迫り、七綾姫を追いやろうとさえする。命を断たれた清姫は、嫉妬に狂い蛇体と化す。そりゃそうだよなぁ。説得力のある変代ぶりでした。
次の亀ちゃん(猿之助さん)は、藤原忠文。七綾姫に恋し、入れあげ、一緒になれば将門を救ってあげるからと約束を取り付けたのに破られ、財を失ったあわれな男。また、米吉くんの七綾姫のせいで人生の狂った人です。眼の前に愛しの七綾姫があらわれたのに、また安珍実は頼光 と2人して逃げられてしまう。七綾姫に執心するあまり鬼と化してしまう。そりゃそうだよなぁ。こちらも、説得力のある変代ぶり。やがて清姫と忠文の霊は中空へ飛び去って行く。これは大詰が楽しみです。猿之助さんが演じる2役は、そうする意味がよくわかる。
中空へ飛び去って行く時に、宙乗り相勤め申し候。こういう時は、お安い上の方の席の方が近くに飛んでいく様をみることができてうれしい。
最後は『道成寺』もの。清姫と安珍ですもの。男女道成寺の趣向で実は狂言師升六とあきらかになる。これで忠文がでてくる。2人の合体する双面の趣向も含む大円団。よくできていて、面白かった。さすが猿之助。 先代の円熟期の芝居をそんなに見たことがないが、同じようにキラキラしたところと、当代らしいスマートさで、こんなに面白くなったのだと思う。

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2014年10月10日 (金)

十月大歌舞伎 夜

母と歌舞伎座へ。母のお誕生日月なので奮発。最前列で堪能してきました。
十月大歌舞伎 十七世中村勘三郎二十七回忌・十八世中村勘三郎三回忌の追善興行。夜の部を鑑賞。ロビーの左右にお二人の写真が。十七世は白いバラがお好きだったのでしょうか。お写真の前に白いバラと香が。十八世は秋草と手の像と香が飾られていました。実際に十八世が愛用されていた器だそうです。手の小ささにびっくり。この手でいろいろな所作をみせてくれていたのだなぁと。しんみりする。
夜の部は、寺子屋から。松王と千代に、仁左衛門さんと玉三郎さん。この夫婦と相対することで、より重厚感がでた。ベテランの威力ってすごい。心に沁みるすばらしい寺子屋でした。源蔵・戸浪夫婦の勘九郎さん・七之助さん夫婦の苦難や覚悟がたまらなかった。それを知ってみるから、幕開けの寺子屋の山鹿育ちの子供ら
のあどけなさがほほえましくかつ悲しかった。野崎村もそうだなぁ。
菅秀才の為に自分が鬼になってというのでなく、お主のために手を貸してくれ、その命を捧げてくれと小さな子供にまで必死に頼む。そのために巡る因果は、我ら夫婦が引き受け、背負っていくという覚悟にあふれていた。松王が首実検をする時、もし見抜かれたらば なっこの刀で よいな と何も言葉には出さず、源蔵は戸浪の手を握り、脇差をこっそり渡す。合い分かったと袖のしたに脇差を隠す。お互い顔もあわさずに。緊張感が溢れる。息を止めてじっと舞台をみつめる。源蔵・戸浪夫婦側に立っても気持が入るし、松王の側にたっても気持が入る。自分の大切な小太郎を、その首を討たせるために寺入りさせる。その寺子屋に、その首を見分にくる。さぁ討てという時に心の無言の叫び。奥でする物音に、流石に身体が反応してしまう様子がたまらなかった。千代は、自分に刀を向ける源蔵に必死に問う。菅秀才のお身替り、お役に立てて下さいましたかと。万に一つ手違いがあり未だ生きているのではないかと持ってはいけない希望を、自分で断ち切る。母の非痛な叫びがたまらなかった。千代に泣くなという松王。うちでさんざん吠えたじゃないかという言葉に労りがあった。かわす言葉ひとことひとことが重く、意味があり、心に沁みた。すばらしい寺子屋でした。

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2014年10月 2日 (木)

幕見三昧

まちきれずに幕見三昧。
十七世と十八世 勘三郎の追善興行でもある十月大歌舞伎をみてきました。
「伊勢音頭恋寝刃」勘九郎の福岡貢に、七之助のお紺。小山三さんの仲居千野は幕見までもよく聞こえる大きな声。言葉よりも、その抑揚の方が仲居らしさを感じる。しみついたものってすごい。万次郎さまは、梅玉さん。こんなふわふわっとした人の為に大量殺戮が。そういうぼっちゃんぽさがとってもよく似合っていました。お岸は、児太郎くん。急成長です。うまくなりました。芝居にちゃんと溶け込んでいます。 勘九郎ちゃんの貢は、若く性急で抑えがきかない。もと武士のプライドとか忠臣とかが暴走する感じ。今までみた貢は、そういうものを超越していたので若さが妙に目についた。難しい。でも年相応の貢なのかもしれない。大量に人を殺してもこれでお主が救えると喜ぶところに多少の狂気があって新鮮でした。あまりの展開に、いつもそういうもんじゃないでしょと思う。今回も。七くんのお紺は、揺らぎのない立派なお紺。出で、膝でちょっと貢さんを押す時の色気の貫録といったら。仲居万野の玉三郎さんのいじわるっぷりったら。ネチネチと違ういじの悪さ。この人がこういう役をと驚きつつ底意地の悪さを楽しむ。料理人喜助の仁左衛門さんといい、こういうご褒美があると芝居が厚くみえる。
続いて「寺子屋」を幕見。源蔵・戸浪夫婦に勘九郎・七之助。台詞がすーっと心に入ってくる夫婦で苦悩がよく伝わってきた。子供に手をかけるとあっては、その因果は必ず我と我が身にかえってこようという覚悟を表すところの意気込みがすごかった。歌舞伎をみはじめたころは寺子屋の良さがわからなかった。筋はわかるけれど理解できなかった。鑑賞を積み重ねていくと、こんなにも一挙手一投足の裏にある意味に胸がいっぱいになる。松王・千代夫婦の心情をみせない肝に対し、源蔵・戸浪夫婦の因果も死をも恐れない肝をみせる。そのやりとりは、攻略というものでなく、必死の祈りのようなものを感じた。玉三郎さんの千代が 一子小太郎を迎えにゆく。覚悟し お役に立ててばならぬが、万に一つ手違いがあり未だ生きているのではないかと持ってはいけない希望を少し引きずって訪ねているのかもしれないと思った。源蔵に斬りかかられ 菅秀才のお身替りになりましたかと問う。我が子のために、我が子の死を確認せずにいられない。細かくスイッチが入り、千代の心中の様々な面がみえた。いろいろな演じ方があると思うが、これもまたよかった。この2組の夫婦の組み合わせは、すばらしかった。感情を押し殺し、急場を救うために子を差し出す。持つべきものは子という重さ。抑えに抑え続け、ひと時溢れて男泣きをする。その抑えている様をみる方が辛く涙が出た。立派な松王でした。 源蔵・戸浪夫婦の熱さに、一緒になって胸を押しつぶされた。すばらしい寺子屋でした。涎くりは国生くん。まじめに一生懸命悪童を演じるところがほほえましい。必死さ満開の中、玄蕃の亀蔵さんだけがわかりやすい悪、カラリとしていてよかった。
一度出て、戻ってきて「鰯賣戀曳網」を幕見。これは別の意味で泣かされました。揚げ幕の内からであろう声「伊勢の阿漕が浦の猿源氏が鰯買えー」がした。あの「鰯買えー」の力の無いかすれた具合といい、間合いといい、声の高さといい、まさしく勘三郎さんでみたそのものなのだもの。幕見席からなので遠く 小さくみえるその姿のせいか、あぁ戻ってきた!というような、どうしてここにいないのしら・・・というような、切なくて なんだかよくわからない感情があふれるてきました。もう、いやんなっちゃう。 本当に。 自分がいかに、勘三郎さんが大好きだったかと思いしらせれました。そんな人がいっぱいいrたとおもう。 猿源氏の 大袈裟に動いても、自然にイヤミがなくて茶目っけがあってという勘三郎さんには及ばないものもありますが、これだけその心を踏襲できる人は勘九郎さんをおいていないと思う。「父だったらこうするだろうとか、せりふのひと言、間、空気といったものを意識していました」とインタビューで答えていましたが、せりふを言うたびに勘三郎さんを思い起こさせることになることは、もしかしたら勘九郎さんの壁になってしまうかもしれないとちょっと思った。それを乗り越えて進化するに決まっているけど。ああ、そうそう。こういう風になさっていたなぁと思いだしながら芝居を楽しむ。七之助さんの蛍火の浮世放れっぷりもよかった。玉三郎さんように別世界の生き物感が出ていました。たわいもないこんな話こそ、歌舞伎らしいおおらかで豪華で常識なんかふっ飛ばす威力を出すことが難しそう。きちんと歌舞伎でした。思い出しすぎて悲しくなったり、傾城ちゃん達を含め、みんなの目を見張る成長ぶりを感心したり、素直に楽しんだりと忙しかった。 最後に花道で 兄弟仲良くというか、2人でいちゃいちゃと引っ込む。七三で「いつまでも見守っていて下さい」と手をあわせていた姿をみて、またポロポロとしてしまった。
あーぁなんで追善なのでしょう。また舞台の上の姿をみたいなぁ。シネマ歌舞伎で会いにいこうかなぁとおもいながら帰路につきました。

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2014年9月20日 (土)

吾妻流 三世宗家・七代目家元襲名披露

国立劇場へ。大劇場で開催される「吾妻徳穂十七回忌追善 三世宗家・七代目家元襲名披露記念舞踊会」をみてきました。吾妻徳彌さんが二代目吾妻徳穂を襲名して日本舞踊吾妻流三世宗家を、壱太郎さんが吾妻徳陽として七代目家元を継承、披露する会のようです。二代目徳穂でかつ吾妻流三世宗家となられるというところがややこしい。宗家と家元というのもややこしい。日本舞踊の世界も難しそうです。
2日間3公演のうち、翫雀さん・藤間勘十郎さん・三津五郎さんが出られる会をみてきました豪華でした。最初に徳穂さん・徳陽さんを中心に総勢28名の群舞という「重ねたちばな」。出演するとなるとおそろいの着物や帯やなにやかや揃えなくてはならないのかしらんとちょっとお金のこととかも考えてしまいました。黒地にたちばなの柄の着物がずらっと並び、柔らかいだけでなくかっこよかった。翫雀さんは、女性の方と「都風流」を踊られました。屏風だけというシンプルな設定がよかった。勘十郎さんと徳陽(壱太郎)さんの「子宝三番叟」。動きが美しく、集中して見入りました。うまい。三番叟感がわからなかったけど、なんてきれいにうごくのでしょうと思った。三津五郎さんが舟人で登場の徳穂さんの「隅田川」でこの日は締め。悲しくなっちゃいました。やはり本当に女性なので母の悲しみがストレートに伝わり過ぎました。これが吾妻流なのかもれません。
この日一番夢中になったのは「京鹿子娘道成寺」。まさか、歌舞伎でみるときと同じ様にそのまま演じるとはおもいませんでした。きいたかきいたかの所家さん達のところがないくらいで、最後には鐘がおりてきてそのうえでキッと見得を決めていました。番組表を購入にしなかったので、どなたが何にでていらっしゃるかわからなかったのですが、真衣彌と何度も大向こうがかかり覚えました。若いお嬢さんですのに、舞うだけでも大変そうなところ何枚も着物を重ね引き抜きし、最後までキビキビと舞っていました。長唄22人がずらっと並び、左右に所家さんが10人並ぶ。あんなに大きな舞台でどんな気持になるのでしょう。手拭もまくのねと、同行のおさるととにもかくにも驚きっぱなし。あーすごかった。 そのあとの「松・竹・梅」の動きの少ない舞も、美しかった。
4時開演で9時近くまでずーっと華やかな舞が続きました。日本舞踊の世界恐るべし。すごいなぁ。

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2014年9月13日 (土)

第九回 ざゞん座

宝生能楽堂へ。第九回 ざゞん座をみてきました。絨毯と椅子が新しくなっていました。シックで素敵になりました。磁石、金岡、三人片輪。
重い習物である「金岡」を最も楽しみにでかけました。平安時代の実存の絵師「金岡」がシテ。物狂いで登場。宮中で出逢った若い女中に心を奪われる。乱心し洛外をさまよう。橋掛かりを登場する様子が、思いつめているようで重々しく別世界感がありよかった。その様を案じた妻に、どうしてしまったのかと問われ、宮中で出逢った若い女中に乱心してしまったのだど 正直にその様をはなして聞かせる。恐る恐るとはいえ、妻に話してどうするのでしょう。案の定、妻に面白くないと思われる。あなたは絵師なのだから、私の顔をその女中のように似せるよう描いてみよといい、絵具を手にする。その提案もどうかと思うが描く方も描く方である。謡にのせ、舞ながら彩色する。荒唐無稽な設定なのに、重々しくみえる。こういうこを味わう演目なのかととても面白かった。難しいところが面白かった。

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