2015年1月 4日 (日)

『わたしの上海バンスキング』

今年の初泳ぎ。自主連するよって声がかかったので、いそいそと参加。初泳ぎ。案外きついメニューで30分しかついていけませんでした。1時間全部は無理でも、もう5分くらいついていけるようになるよう精進しよう。

去年、オンシアター自由劇場のあった六本木の地下劇場 音楽実験室・新世界で、「わたしの上海バンスキング」出版一周年記念イベントに行った際に購入した 明緒さんの『わたしの上海バンスキング』(愛育社刊)をながめる&読む。
串田さん、コヒさんだけでなく、笹野さんや片岡さん、花岡さんも登場し語り演奏。何よりも、あの場所にいることが幸せだったなぁと思いながら読む。去年といっても12/22だったので2週間くらいしか経っていないけど。
彼女は、1996年7月オンシアター自由劇場の解散公演の際にこの劇場を初めて訪れ、 そこで串田和美と出会う。自分を“遅れてやってきた観客”と位置づける(それは串田さんの意図のように思うけど)。その視点で、オンシアター自由劇場をみつめる。どうして彼らの芝居「上海バンスキング」には、こんなにも人が集まるのか。この串田和美という人はどんな人なのか。今では、串田和美の配偶者でもある彼女。一番の感想は、素直な人だなぁということ。すごいと思ったことを、すごいでしょという形容で人に伝えようしていない。すがすがしいほど素直でした。
思い入れが強すぎる作品なので、この素直さには妬けるな。

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2014年9月10日 (水)

『ぼくを忘れたスパイ〈上〉〈下〉』

父が、一気に読んでしまったよと言っていたので借りて読む。キース トムスン (著) 熊谷 千寿 (翻訳) 『ぼくを忘れたスパイ〈上〉〈下〉』 (新潮文庫) 。くたびれた。
借金だらけの 競馬狂チャーリーが主人公。電気メーカーに勤務していた平凡な父親も もう現役をしりぞいている位の年齢の親子。競馬での借金に首が回らなくなり、いよいよ追い詰められているというのに、借金を競馬で挽回しようとする。働きたまえチャーリーよ。パッとしないだけでなく追いつめられているダメチャーリーは、真面目な父親と会うこともない暮らしを送っていた。そりゃ合わす顔はないよねとチャーリーを怒りながら読む。
父親と交渉のない毎日を送っていたが、父のことで呼び出しをうける。認知症らしい。その電話からどんどんチャーリーの毎日の歯車がかわっていく。尾行され、誘拐されそうになる。家は爆破され、殺し屋までも出現する。何が何やらわからないうちに殺人犯になっている。しかも親子そろって。父は普通の営業マンではなかったのか。ぼんやりとしている認知症の父は、最大の危機を迎える時だけはっきりとする。なんとも鮮やかに危機を切り抜け、チャーリー共々脱出する。父は 辣腕スパイだったのだ。スーパーヒーローなのである。もう驚愕だらけ。常に追われ、常に危機一髪の場面にまる。追ってくるものは悪者でなくCIAだかFBIだかみだいだし、父は元CIAみたいだし、誰も信じられず、どこも行くあてがなく、敵は恐ろしく執念深く かつ 沢山いる。助けて~と思いつつ上下を読み切る。
父がそんなに執拗に追われる程の国家機密って何だったのだろうだろう。知ったら読んでいるこっちの命に関わるような気がして、そこはぼんやりと読むようにしちゃった。敵の手口は、けっこう残酷なんだもん。面白かった。そして大層くたびれた。
チャーリーがどんどんたくましくなった。ハリウッド映画だと身体がたくましくなりそうだけど、チャーリーは心がたくましくなった。弱いのに立ち向かう。自分がやられて事態を動かそうと思うほど。心が強く腕っ節が弱っちいチャーリーもまたスーパーヒーローにみえた。

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2014年9月 3日 (水)

『鬼九郎孤月剣』

高橋克彦の『鬼九郎孤月剣』 (新潮文庫)を読む。けっこう分厚い本。
柳生十兵衛だの、荒木又衛門だの、幡随長兵衛、高尾太夫・・・ オールスター。錚々たる面々が舫鬼九郎を守りながら京を目指す。風間の忍びがしつこく追う。絶対に負けないような凄腕の輩がわんさかでてくる。強いものも普通の人も、どんどん斬られて死んでいく。
「舫鬼九郎」シリーズを読むのははじめてじゃないけど、前作3つ全ては読まず 第4作を読みました。それでも舫鬼九郎の背負っている運命は、よくわかる。
生きるとは。そういうテーマを感じた。
ですが、しつこく強い敵とのさぐりあいにくたびれて、男の美学ですよそれはともちょっと思った。

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2014年7月22日 (火)

『怖い絵』

久世光彦の『怖い絵』(文春文庫)を読む。桜庭一樹の読書日記の中で、久世光彦氏が文壇バーでの話題の本のことがわからなくて悔しくて絶版本を探したという記述を読んだら、久世光彦著作のものが読みたくなった。以前から表紙の絵画が気になっていた『怖い絵』を読む。
表紙の絵は、高島野十郎の蝋燭。ここからして期待が高まる。
若かりしころの久世光彦自身とその周り人間が、死というものの側にいて、それに取りつかれている怖さに驚く。なによりも、自分のことをさらけ出していることに。しかし暴露ではない。その差をみせつける文章だった。人の内面を描き、人に言わないことを表現する。どろどろとして、でも美しく、いやらしく、純真でもある。卑屈であるが、まっすぐでもある。絵画は、そんな少年や若者達に大きな影響を与える。著名な画家が描く絵画でなく、きちんと絵画をみている様はうらやましい程であった。こういう風に怖がり、魅了される心を持っていたはずの頃のことを考えた。いつでも、追いつめられているようであり、のんきでもあった。視野は狭いが、はげしく思い込むことができた。
この作品で紹介された絵画で、ベックリンを知った。この作品を読まなかったら「死の島」の怖さに気が付かなかったかもしれない。何やら私の胸に落としたのは、絵画だけではない。。桜庭一樹の読書日記の中でも気になっていた西条八十。この本で出てきた「トミノの地獄」が妙に気になった。何度も口にだしてみたくなった。何にひきつけられているのかわからないけれど。姉は血を吐く、妹は火吐く と何度も口に出してみた。
久世光彦は、よく生きていたと思った。名作を創る大人になるまで生きていたと思った。そんなにも死に魅了され、自ら命を絶ってしまうような友人と共に過ごしていて。自分とは全然違う青年時代を送っているが、背徳的で暗く。血まみれの美少年の挿絵をみて、そこに憧れを感じるその感じ、その通ってきたときにの気持は理解できる。久世光彦は書く「怖いものがたくさんあったということは、なんだか幸せなことのような気がする」と。その感性こそが昭和だと思った。明るく優しい大人たちに囲まれて育つ、現代の子供たちが、恵まれたことと引き換えに無くしたもの。ちょうど狭間の私はその両方がわかる。この本の怖さは現代の怖さはと違うと思った。久世光彦の言う「自分の正常な鼓動を確かめながら、笑って不幸になって行く」このたまらなく怖い気持ちを、大切に思う。

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2014年7月21日 (月)

『三月は深き紅の淵を』

桜庭一樹の読書日記を読んだら無性に読みたくなった。恩田 陸『三月は深き紅の淵を』 (講談社文庫)を再読。恩田陸ではこれが一番好き。最初に読んだので印象がとても強いせいだと思う。
一冊の不思議な本『三月は深き紅の淵を』を巡る4部構成の物語。それぞれが別のようで、からみあうところもある。複雑で、全てがあきらかにならず余韻がある。本の中の本に魅せられる。本の中の本に物語がある。どこまでもぐっても、まだ先に何かがある不思議な感じ。本が好きな人がいっぱいでてきて、その本を愛好する様に飽きれつつも憧れる。自分も沢山読むのに。第一章・待っている人 では、そんな若手社員の彼が出てくる。会長の別荘へ2泊3日の招待を受ける。たった一人だけ。しぶしぶ屋敷に向かい謎の本に序所に魅了されていく。もどってこれなくなりそうな怖さを含んでいる世界がいい。
第二章・出雲夜想曲 では、女性編集者2人が夜行列車で出雲へ向かう。ただ本が好きなだけではない、本そつくることに携わる編集者。夜行列車という閉ざされた不思議な空間で酒盛りをしながら本の話をする。伝説の謎の本の話になり、ついには行く先の出雲にて作者と推定される人を訪ねる旅となる。目的があるのにどこか心もとなく堂々巡りになりそうな不思議な世界があった。
第三章・虹と雲と鳥と では、冒頭に女子高生が2人転落死する。この高校生の世界は怖く残酷で美しかった。運命にはあらがってもしょうがないというあきらめと、散ってしまうことになってもあらがう若さの美しさの危険な感じ。この人の描く高校生の世界はすごいと思う。大人になったら、高校時代は通過点ということがわかるがあの頃はわからなかった。今が世界の全てで、他の世界を認めず、好転することを信じず、絶望を愛するところがあった。大人になってしまった今、その空気感がよくだせるなと。真相を追い、事実がわかってもなお物哀しくてよかった。
第四章・回転木馬 では、人々も物語も飛びまわる.とりとめがないようだがリンクする。それぞれの人生の空間を映しだす映像を順にみているような。切り替わって余韻を引きづりつつ巻き込まれている。わからさなが不快ではない。ひとつづつのエピソードがそれぞれ小説になりそうな 読んでみたいと想わせる贅沢な話。この本は、恩田陸の初期のもの。ここにちりばめられたモチーフが、どの作品にどうのように影響を及ぼすのか。読み返し、まだまだ未読の恩田陸の作品を読むのが楽しみになった。
幻の本『三月は深き紅の淵を』。それを探す話。実際にこの本は存在するのか、誰の手によるものなのか。魅惑的な本について、時間もお金も人生もかけて考える。実に魅力的である。
解説は、皆川博子さん。うまい。物書きってすごい。(すごい物書きによる表現がすごいのだけれど。)うまいなぁ。 物語がすばらしく、解説までがすごい。最高。

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2014年7月17日 (木)

『桜庭一樹読書日記1・2・3』

これぞプロの日記。
桜庭一樹の『少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記』 『書店はタイムマシーン 桜庭一樹読書日記』『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』(創元ライブラリ)を読む。満喫。
私が、プロの物書きの書く日記が好きなのを知るおさるが 桜庭一樹読書日記 を薦めてくれた。なぜか買ったままずっと積んでおいた。そうそう、これまだ読んでいなかったと手にとる。あわわわわわ。ものすごい。なぜ、すぐに読まなかったのだろう私と、己の不甲斐なさにクネクネしながら読む。ゆっくりと大事に読む。1冊目を読みながら3冊目まで購入。手元において安心しながら読む。 読み始めて、あっ桜庭一樹って女子なのねと驚く。格闘家っぽい男子かと思ってた。なぜ、かわいらしい甘そうなアルコールを飲むだろうと思っていたら。女子なら、あっていた。
本当に本当によく読む人である。読みまくるとはこのことだと実感した。編集者という人種の読書量にも驚く。本をこんなに愛している人が、本をつくっていたのかと、ものすごく納得した。かっこいい。編集者諸君は、魅力的な人だらけで、登場するたびに興味深く読む。若い編集者の あれ誰ですか の一言に、「若いのにあんなに本を読んでいるのに長淵剛を知らないなんて」と思う桜庭一樹の感覚が面白い。 本を読みながら、あーこれ読みたい。これも読みたいと思う。読書中の大半は、かなわない かなわない かなわないと降参しながら読む。彼女がこよなく愛するジョン・ディクスン・カーのミステリや、ガルシア=マルケスは読んでみないといけないなぁ。
紀国屋書店に歩いていかれる都会に住む生活も、実家の鳥取にこもる生活も全部本が中心。他のことに執着しない いさぎよさが気持よかった。直木賞の受賞や、電撃入籍などの一大事にまつわる大きな出来事もある時期の本の読み方も面白い。かわらない本の虫。
彼女の人となりが浮かび上がってくる。プロの物書きの面白がり方は、こちらに感染する。好きさを表すのは腕がいる。面白さを共用した人となら、どんどん盛り上がれるが、自分が感じたワクワクを伝えることのなんて難しいことか。
ページ下の補足までも丁寧に読む。とにかく読みどころだらけ。ぼんやり気味に日常を描いていますが、プロの覚悟がみえる。時折ハッとする。生きにくい道をあえて進むことを選んだ厳しさがみえた。
一番驚いたのは、飲んで帰ってきた時に お風呂に入る前に 酔いざましにと本を手にとるところ。おそれいりました。次巻がまちどおしい。

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2014年7月14日 (月)

『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) 栞子さんと繋がりの時』

ビブリア古書堂シリーズ5冊目。三上 延の『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) 栞子さんと繋がりの時』 (メディアワークス文庫)を読む。前作は、乱歩を巡り、栞子さんの内面の怖さがでるような関係をみせられた。今回も一人で考え込み、その深い思いを抱えるがあまり用心深くなるけれど 傍観していて怖さをあまり感じずにすんだ。人は変わっていく。それが作風に出ていた。暗雲もあるけれど、それも乗り越えられそうな強さも感じた。4があって5があるんだなぁ。
本にまつわる話がやっぱり面白い 。

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2014年7月13日 (日)

『本日は、お日柄もよく』

お稽古とその後発表会の反省会。我が姿をみて我が姿に驚く。こんな風なのか。精進あるのみ。こぴっと頑張るという気持ちがワクワクとわく

またマハ。原田マハ『本日は、お日柄もよく』 (徳間文庫) (角川文庫)を読む。
あれもこれもは手に入らない。それはわかるが、辞める勇気がない。なぜ勇気が持てたのだろう。言葉の持つ威力、可能性を本当に実感し信じることができたからだろうか。信じている人の言葉だから耳にちゃんと届いたからであろうか。
いろんなことを考えた。主人公のこと葉は、伝説のスピーチライター・久遠久美の祝に感動し涙した。ス ピーチライターとはなんだ。どんどんひきこまれた。一生に一度の晴れの舞台。結婚式でのスピーチ。選挙における決意表明のスピーチ。そこで印象に残るものがあったか。今でも思い出すものがあったか。言葉の持つ力を愛しているので、とてもよかった。がんばりやさんが奮闘ってだけの話ではない。言葉って絶対に力がある。忘れられない言葉があり、威力も信じている。それなのに情報があふれ、ていのいい表現が浸透し、言葉の力が弱まっている。この本の言葉は、生きている。ああいい言葉だなとおもいながら、じっくり読んだ。

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2014年7月 9日 (水)

『てのひらの闇2』

『てのひらの闇』につづき、藤原伊織『てのひらの闇2』(文春文庫)を読んだ。
前作で飲料会社を離れたが、元同僚で親友の柿島の死 しかも集団暴行を受け殺されたことで、また動き出す。柿島の死に納得がいかず、独自に詳細を調べるうちに事件んの真相に近づいていく。また、卑怯で強大な力を持つヤツらがあらわれる。それと同時に心から信頼できる人間とも出会う。その人間達の個性的で格好のいいこと。きちんと仕事をし、きちんと楽しむ。中途半端なことをしないのがとにかく格好よく感じるのは、それが自分に欠けているいるところだからである。
主人公 堀江は、強く、仕事ができ、冷静だけど、あつく、酒を飲むとすぐに記憶を無くす。ダメが同居していて憎たらしいほどいい男して描かれる。あと、この本で現れた大会社の創業社長の男っぷりにもホレボレした。女子もいい。
亡くなった柿沼の人間としてのすばらしさは前作でよくわかっていた。しかも見た目もよさそうだ。2で出てきた細君の華奢で芯の強い女性像の美しさが、事件に本質に迫るにつれ物悲しくなってくる。事件もきちんとしているし、人間の描き方もすばらしい。
著者最後の長篇となってしまったそうだ。あぁ。悲しむより、読むことができたことを嬉しく思おうと思った。

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2014年7月 8日 (火)

『てのひらの闇』

藤原伊織『てのひらの闇』(文春文庫)を読んだ。
主人公の男は輝かしい道を歩いているわけではない。でも絶対に人を惹きつける男である。強引で、上にこびず、かといってわがままではない。強いのだけど陰があり、仕事もできる。読んでいてどんなに幸せを願っても、自分からすっとその幸せに背を向けてしまう。なるほど、これがハードボイルドかという作品。
主人公 堀江は、会社でリストラに直面している46才。彼は、淡々とそれを受け入れる。私は、うらまずにはいらない。そんな選択を押しつけた側は、自分は安泰でも 親の因果が子に報いできっと子孫に報いがいくわと思ってしまうような人間だ。 有能な彼は、最後まで自分の仕事をする。自分のスタイルをつらぬく。飲料会社宣伝部課長という役職でありながら、会長から直々に仕事の打診がくる。そこに真摯に向き合い、なにかねじ曲げられ隠されていることに気づく。その指摘を受けた会長が、それを素直に受け入れ感謝し、その夜自殺する。
堀江の出自が極道であったこと、企業に吸着する極道と政治家、過去の女、みごとなハードボイルドの世界。堀江の周りには、魅力的なというか個性的な女や男が現れ、手を貸すような関係を築く。やっかいことだから、言わずにいてもちゃんと気が付き手を差し伸べる。満身創痍で敵に立ち向かい、ボロボロになり、ほろ苦い結末を迎える。やっぱいいいなぁ、藤原伊織。
自身は東京大学卒業。大手広告代理店に勤務の経験があったそうだ。解説の そこを強調して紹介する言い方がなぁ。ハードボイルドじゃない。解説者逢坂剛御自身も大手広告代理店に勤務と言及。電通や博報堂勤務を否定するつもりでない。仲間意識を伝えたいのでしょうが、こういういい世界を読んだ余韻を楽しんでいるときに、野暮な気がした。

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